このままで良いのだろうか





―パコーン
     パコーン―


「弦一郎。どうした?今日は調子が悪いように見えるが」

「いや…すまない」

「真田副部長珍しいっすねー何か考え事っすか?」

「少しな…すまないが少し休む」

「あぁ。無理はするな」


本当に、このままで良いのだろうか

近藤が桜田組27代目若頭、桜田竜輝の妹と知った時から思う

このまま幸村の言いなりで彼女を利用し続けてはいけない

このままでは部の…いや、俺達の命にも関わるだろう


「真田君。詩織さんからドリンクです」

「あ、あぁ…すまない」

「どうしたんですか真田君。今日の貴方は貴方らしくありませんね…何か悩んでいるのであれば私で良ければ相談に乗りますが…」

「柳生…お前は知っているか?桜田組の事を」

「…えぇ知っていますよ。というより全国でその名を知らない者は居ないでしょう…その桜田組がどうしたんですか?」

「もし、もしだぞ…その桜田組を侮辱するような真似をしたらどうなると思う?」

「確実に命を落とす事になると思いますが…」

「だろうな」

「何故、急にそんな事を」

「いや…過去にそういう真似をしていた奴がいたからな。少し考えてしまっただけだ」


ならば…今俺達がやっている事はなんだ?

近藤を利用している。それはつまり桜田組を利用しているのと同じではないのか?

このままでは俺達は確実に命を落とすだろうな

この事を幸村にどう伝える?近藤が桜田竜輝の妹だと言う事は出来ない…しかし…

っ…待て。以前日向が好意を抱いていた相手…まさか…


「奴が…桜田竜輝、ではないか」

「真田君…?」


厄介な事になってしまった

日向には諦めてほしいが…それは難しいかもしれない

どうしたら良い…


「詩織。近藤って仕事してるか?」

「ちゃんとしてるよ!私凄く大助かりしてるんだから!」

「本当か?実は影でサボッとるんじゃなか?」

「何でそうなるの?椿ちゃんは良い子ですー」

「まぁ詩織が言うんだしそうなんじゃねぇの?」

「そうっすよ!俺見ましたけどちゃんと仕事してましたよ!」

「つーかさお前…最近あいつといね?」

「そ、そそそんな事ないっすよ!たまたま!」

「赤也って絶対椿ちゃんの事好きだよね?私応援するよっ」

「な、なんでそうなるんすか!違うっすよ!」

「じゃあ赤也にお願いするよ」

『え』

「来月の予定表。彼女に渡してきて…今日近藤さん休みだから」

「……ぅいっす…」


赤也は近藤の家の事を知っているのだろうか?

いや、絶対知らないな…一人で行かせて大丈夫か?


「幸村。そのプリント俺も同行しよう」

「げっ…!」

「なんだ赤也。俺では不満なのか?」

「い、いえ…」

「…」

「どうだ?」

「良いよ。真田が一緒なら赤也も真面目に行きそうだし」

「なんすかそれー」


それから部活は終わり俺と赤也は近藤の家へと向かった

初めてだな…祖父は以前現役の刑事の時に何度か行ったと聞いたが…


「椿先輩の家、どんなんすかねー」

「赤也。一つだけ言っておこう」

「なんすか?」
「…見ても騒がず驚くな…」

「…へ…?」


商店街から更に数十分歩いた先に桜田組の屋敷が見えた

赤也の表情はみるみる硬くなり俺の方を見て


「…副部長、まさか…」

「ここだ」

「……ええええええ!」


門の上に大きく"桜田組"という立て掛けがあった。話で聞いた以上の広さだな

赤也が驚いていると大きい門の方ではなくその隣の小さな扉から頭に鉢巻のようなものをした大きい目の男が出てきた


「あれ…ここに何か用かい?」

「あ、いや…あ、そのっ」

「我々は近藤椿さんと同じ学校の者で、近藤さんが休みとの事でしたので今日配られたプリントを渡しに来たのですが」

「あーはいはい!……………」

「?…あの」

「ぁいやっ…そ、そんな名前の子うちには居ませんッ!!」

「「…は?」」

「どこで聞いたかは知りませんが家間違いだと思います!」


なんだこれは…

家を間違え?…そんな筈はない


「ほ、ほら副部長!違うみたいっすよ?……とっととここから離れましょうよ…」

「いやここで間違いないのだが…」

「い、いいいえいえ!ここにh「眞澄。どうした?んな慌てて」

「わ、若ッ!」

「…」

「…あっ」

「そちらの学生さんは?」

「近藤椿さんの友人で…今日はプリントを届けに来たのですが」

「へぇーあいつに友達出来たのか…良いぜ。ほら入りな」

「わ、若!良いんですかい!?お嬢の事!」

「別に良いって。遅かれ早かれ知るんだからー」

「もう!若がいつもそうだから前の中学でも保護者の人にバレちゃったんですよ!」

「はいはい」

「…あ、どーぞ。お嬢のご学友なら話は別です。お入りください」

「は、はい」

「すいません。失礼します」


俺と赤也は門を潜った

玄関の前も凄いな。庭が広い…玄関もこれはまた素晴らしい

さすがは桜田組


「ね、ねぇ副部長。さっきの男の人…確か詩織先輩が好きだって言ってた」

「あぁ…そして桜田組27代目若頭だ」

「だ、大丈夫なんすか!?つーか椿先輩って「あんた達がお嬢の友人?」
「あ、はい」

「あ…あの人」

「ふーん……ほら、上がりなさい。部屋に案内するから」

「お願いします」


あの真ん中分けされた前髪の女性…以前日向を凄い険悪な視線で見ていたな

成程…彼女も組絡みだったのか

これからどうなるのか。どうしていけば良いのか

困ったものだ。一人の女に執着するとこれ程難しくなるのだな

おじい様…俺も桜田組の中へと入りました
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