でも私は負けない




バシッドカッ

「さっさとマネージャー辞めなさいよ!」

「調子こいてんじゃないわよ!」

「…っ!」


あれから数日、私は呼び出される回数が増えた

でもきっとこれで日向さんが呼び出されずに済むんだ…良かったと思えば良いの、うん

数分間殴られ蹴られてようやく終わって女の子達は帰ってった

今日は宗助さん居ないからどうしよ…一人で保健室行こうかな


ギィッ

「椿っ!」

「っ…ま、舞ちゃん…?」

「椿の白い肌に痣がああ!あんのメス豚共めえええ!」

「…(ポカーン」

「椿!ウチが居るさかいもう大丈夫や!今からあのメス豚共を消してくるで!」

「………って舞ちゃん消しちゃ駄目ええええ!」


嵐のように来て嵐のように去った舞ちゃんを追いかけて止めた

痛い身体を無理に動かせたから余計痛いよ…グスン

その後舞ちゃんに保健室まで連れてってもらいました



「あーああいつ等見た目よりも頭良いんやね。服で見えん所を殴っとるわ」

「…良かった」
「?」

「兄さん達に心配かけさせたくないから」

「椿…」


兄さん達には兄さん達の仕事がある…私なんかのせいで仕事に支障を出すわけにはいかないし

それに痣なんて何日かしたら消えるし、うん!


ガチャッ

「椿先輩!大丈夫っすか!?」

「おいコラアアアア!!今椿を治療しとるんやから出てけえええ!!」

「ぎゃああああ!」

「舞ちゃんんんん!?」


土下座するから鋏を切原君に投げないでええええ!!

切原君が半分涙目になってて可哀相…


「ちゅーかテニス部が何の用なんや!」

「い、いやっ椿先輩が、呼び出されたって聞いて…」

「ほーほーほー…ほならアンタの先輩等はどこなん?マネージャーが呼び出されたんや。そらぁ来とるわなぁ?」

「そ、それは…」

「ハッ…利用した張本人共は知らん振りか………マジでむかつく」

「舞ちゃん。切原君に八つ当たりは駄目だよ…切原くん、私は大丈夫だから」

「そう、っすか…?」


……なんだろうこの感じ

時々舞ちゃん組のみんなと似たような雰囲気になるんだよね

…気のせいかな?

えと、舞ちゃんに切原君の事を話すと


「…んで?ワカメ君は椿の味方っちゅーんか?」

「ワカメは止めてくれません?」

「うん。彼とっても優しいの」

「えへへ。椿先輩に言われると嬉しいっす!」

「ハッ」

「なんで鼻で笑うんすか!?」

「あはは」


ガチャッ

その時扉が開いて振り向くと同じクラスの子達が数名入ってきた

私と目が合うと駆け寄ってきて


「椿ちゃん大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ」

「良かったー!」

「ファンクラブの子達も最悪だよね。椿ちゃん何もしてないのに」

「一応マネージャーになってるから」

「それでも新しく入った人まで呼び出す事ないのに」

「椿ちゃんマネージャー辞めちゃいなよ!」

「私達が着いてるから大丈夫だし!」

「みんな…」

「うっぅっ!皆さん…!椿をよろしゅう頼んます!」

「あはは!舞ちゃんお母さんみたい!」


嬉しかった

こうして心配してくれる友達がいて…私頑張ろう


「良かったっすね」

「うん」

「…詩織先輩にもこういう友達が居たら何か変わってたかも…」

「え」

「ぁ、何でもないっす!」


…さっき…日向さん…の事

どういうこと…?


「…」


私達はまさか保健室の外にあの人が居るなんて思いもしなかった

どれ程苦しんだのだろうか

どれ程我慢してきたのだろうか

今の私には知りませんでした




























日向side―


「…」


どうしてこんなに椿ちゃんに嫉妬するんだろ

そりゃあ椿ちゃんは可愛いし優しいしお淑やかだし…悪い部分がないのは認める

でも…


(あんなに友達に心配されて羨ましいな…)


私には女の子の友達なんて一人も居ない

だから椿ちゃんに嫉妬してるんだ。私には精市達しかいない


「詩織」

「えっ」

「どうしたの?しかめっ面なんかして」

「う、うぅん!なんでもない!」

「この商店街にあるケーキ屋凄ぇ美味しいんだぜ!」

「また甘い物か」

「大丈夫だって!甘さ控えめなのも結構置いてあんだぜ!」

「ほう、それは楽しみじゃのう」

「詩織さんも甘い物好きでしたよね」

「え、あ、うん!ブン太奢ってね!」

「えー!」


確かこの商店街……"若"が居る場所!

そう思うと私の胸は高ぶった。また若に会えるだろうか…そんな事ばかり考えてしまう

でもそんな横で蓮二は見逃さなかった


「誰かに会えるかとソワソワしている確立98パーセント」

『?』

「ぅえっ!?//」

「ここに誰かと待ち合わせしてるの?」

「う、うぅん!違うの!そう言うんじゃ…………"若"!!」

「え」

「は?若?」

「ご、ごめん!みんなちょっと待ってて!」


あの和風が漂う店に若の姿が!

私は嬉しくなって急いで傍に走った

恋って良いね。嫌な事が全て吹っ飛んでしまう


「…」


でもみんなの中でそれを面白くなさそうに見ていた彼が一人居た

中学生が一番難しい歳だって知ってる?

悩みを沢山抱え込んでしまう

私もみんなそう…だからか、自分の居場所を求めてしまうの

でないと…間違った道に進んでしまう恐れがあるから――――
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テーマ「人外ファンタジー」
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