頑張れそう




「ここなら…」


連れてこられたのは水道場

今は誰も居ない


「…近藤、先輩」

「…私騙されてたんだ…」

「っ」

「日向さんのサポートお願いされて、精一杯頑張ろうって思ってたのに…私…利用されてたんだ」

「、先輩!」


その時切原君が私の片手をギュッと握った

その眼差しは辛そうで何か、申し訳なさそうな瞳だった


「すいま、せん」

「え」

「俺嫌だったんす。誰かを利用して詩織先輩を助けるなんて…でもッ俺後輩で先輩等には逆らえなくて…」

「…」

「先輩!今からでも遅くないっす!マネージャー辞めてください!」


切原君の言葉に驚いた。彼もまた日向さんのために利用されてくださいとか言うんじゃないかと思った

でも彼は違う…今の彼の目は幸村君達の分まで謝ってる目だ…

こんな事許されるだろうか。後輩が全て荷物を持つ事はない


「貴方は…優しいんだね」

「え?」

「…良いよ。私は利用されても」

「なっ!何言ってんすか!?」

「だって私こういうの慣れてるもの。前の学校だって似たような感じだったし…私は大丈夫」

「先輩…」


慣れてるから大丈夫なんて実は嘘

今凄く傷ついてる。こんな事初めてだから…どうして良いか分からない。でも私は普通にしてれば良いんだよね

普通にしてファンクラブの子達が私に敵意向けてそれで日向さんが殴られずに済む…そうだよ


「日向さんが殴られなくなればみんな安心するんでしょ?」

「え」

「じゃあ私頑張るから。本当のマネージャーさんが傷つかずに済むのがみんなの願いなら」

「先輩…可笑しいっすよこんなの…!」

「…」

「誰かが傷つかなくなっても俺…また誰かが傷つくなんて嫌っす!」


そう言う切原君の目からは涙が落ちていた

辛かったんだ…ずっと心にしまいこんでいたんだ


「だ、大丈夫!私体は丈夫だし心はね?鉄で出来てるから!」

「ズズッ…鉄ってなんすか。無理しないでくださいよ」

「一人だけでもそんな風に思ってくれる人が居てくれれば私良いから」

「近藤…先輩」

「頑張れるから」


どうして私がこんな事を言うかなんて分らない。口が勝手に動く

本当は逃げたいのに…恐くて避けたいのに…

多分、切原君の存在が大きいのかもしれない

彼がこんなに私の事を心配してくれるから私は涙を流さずに済んでる。変わりに彼が泣いてくれてるから


「俺…先輩の傍に居るっす。出来るだけ先輩の事守るっす!」

「有難う」

「先輩って良くお人好しって言われません?」

「凄く言われる!」

「やっぱり!どう見ても先輩お人好し過ぎるっすもん!」

「えへへ」

「…あの」

「ん?」

「先輩の事名前で呼んで良いっすか?」

「どーぞ」

「へへ…じゃあ椿先輩!」

「はい」

「俺の事も名前で呼んでくださいよ!」

「えーそれはちょっと…」

「なんでっすか!?」


部活で心を開ける人が出来た

これで私は頑張れる…うん、絶対
















ガチャッ


「…こんに、ちは」

「近藤さん遅い。遅刻だよ」

「ご、ごめんなさい」

「詩織仕事始めてるから急いで行って」

「はい」


さっきまで私が呼び出された事話してたのに私の前じゃ言わない

心配も全然してくれない


「赤也も遅刻だよ」

「すんません」


幸村君は私と同様に切原君にも冷たく言い放った

そこら辺は平等なんだ……意外


「日向さん!遅れてごめんなさい!」

「大丈夫だよ〜さ、仕事しよ!」

「うん」


私頑張るよ

こんな事で挫けてらんないもの

兄さんのように強くならなくちゃ…
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