「千鶴様。お掃除終わりましたか?」
「はい。此方もお掃除したほうが宜しいですか?」
「ではよろしくお願いします」
あれから何一つ問題なく過ぎていった
昼は女中として働き、夜はしょうけら様達と過ごして…私は幸せです
「千鶴や、最近生き生きとしておるのう」
「そうでございますか?」
「うむ。妾もお前の楽しそうな姿を見るのは嬉しい事じゃ」
「勿体無いお言葉です」
「ほほほ……して、しょうけらとはどこまでいったのじゃ?」
「えっ」
「あれからしばらく経つ…もうそろそろ良い事があっても良い頃合じゃろ?」
「え、えーと…その」
「なんじゃ。しょうけらはまだ何もしておらぬのかえ?」
「え!?その!」
「…あ奴は男以下じゃな…やはり虫であったか」
「淀殿。私は今のままでも十分幸せでございます」
「…それで良いのか?千鶴」
「?」
「お前はもっと女としての幸せも求めて良いのじゃ」
女としての…幸せ…
そういえば殆ど女中の仕事とか夜はしょうけら様とお話はするけど時間になれば自分の部屋で寝るし
…でも、しょうけら様はいつも私の事を思ってくれている。それだけで私は幸せなのです
「――…それでよ。どこまでいったんだよ」
「え?何が?」
「ぎゃはは!とぼけんじゃねぇよ!千鶴とだよ!」
バンバンッ
「叩くな痛い…千鶴とはいつも通りだ。ちゃんと身の安全を影から守り夜はお互い面白い話とかし合って一日が終わる」
「「既に老夫婦だな」」
「何故そこで声を揃えるんだ。鬼童丸、茨木童子」
「お前たちがあまりにも老体化していて不安になってな」
「俺は別に関係ねぇけど」
「これが普通なのではないのか?」
「テメェの普通の基準が恐ろしくて仕方ねぇよ」
「今の時代でもよー手ぇ出さねぇ男なんていねぇと思うぜ!ぎゃははっ」
「…手を、出す…?」
「どうせテメェのことだ。口付けぐらいしかしてねぇんだろ」
「…」
「まずいぞ茨木童子。当たっているようだ」
「お前本当になんなんだ?」
「…千鶴に手を出すなど…死んでも出来るか…!」
「死んだら出来ねぇけどな。ぎゃははっ」
「私は主に誓ったのだ!千鶴には手を出さぬと…!」
「とんだ誓いを立てたな」
「何があっても私は千鶴を汚したりはしない…それが神の思し召しだ。私は失礼する」
スゥッ
「「「……」」」
それが、私が淀殿とお話していた同時時刻の事でした。
ガタッゴソッ---スゥッ
「何をしておるのじゃ。お前等」
「羽衣狐様!」
「千鶴としょうけらを若い夫婦に戻そうと思いまして」
「今更止めても無駄だぞ」
「……(ニコリ」
(((…まさか意見が同じだったなんて…)))
「全く…あいつ等、こんな時間に呼び出すなどと」
「何のお話でしょうね」
「あいつ等の事だ…きっとくだらないこ、と…」
呼ばれたお部屋へたどり着き、しょうけら様が話しながら襖を開けると固まってしまいました
横から中を見てみれば……お布団が…一つ…え
「…(プルプル」
「あ、あの…しょうけら、様?」
「!だ、断じて違う!わ、私は決してそのような事は考えてもいないし思っても居ない!」
「は、はぁ」
「ま、待っていてくれ千鶴!い、今すぐあいつ等を切り殺してくる!」
「え、しょうけら様!そ、それはι…そ、それより折角出してくださったんですから宜しかったら一緒に寝ましょう」
「今すぐ斬りっ……え」
きっとお布団の数が足らなかったんですよね
お客様でも起こしになられたのでしょうか?急ですよね、いつも
「…千鶴」
「はい」
「せ、狭くない、か?」
「はい」
「…//」
「あいつ等は餓鬼か?初めてのお泊りか?」
「いや千鶴が若干人より鈍いのだ…そこが欠点だったな」
「よしっ!そんじゃあ次考えるか!ぎゃははっ!」
「…貴様等…面白おかしくやっているだろ!?」
「しょうけらが向こうから凄い勢いで刀持って走ってくるぞ!?」
「駆けっこか?上等だ。虫より鬼の方が強ぇ事を証明してやる…!」
「いや多分そんな事ではないと思うが…今は逃げた方が勝ちだな。狂骨!逃げるぞ!」
「待てえええ!貴様等三人地獄へ落としてやるうう!」
「今日も平和じゃのう」
「そうですね」
「して千鶴や。しょうけらとは昨夜どこまでいったのじゃ?」
「…へ?」
「…やはりあ奴は只の虫であったか…」
最初は不安で不安で堪らなかった
でも、しょうけら様のお言葉をはじめ、淀殿や茨木童子様や鬼童丸様や狂骨様、それに多くの皆様のお陰で今私は幸せでございます
妖だからだとか人だからとかは関係ないのですね。私はしょうけら様を愛し、しょうけら様は私を愛してくれて…恋路に人も妖もありません
しょうけら様は私に幸せをくれました…きっとしょうけら様も同じ事を申すでしょう
有難う、有難うございます
只只…そのお言葉だけをお贈りさせて頂きたく存します
「目元はしょうけら様にそっくりです」
「鼻は千鶴だな」
「ふふっ」
→あとがき.
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