「全く…最近の幹部殿達ときたら」

「えぇ。人間の女なんぞと馴れ馴れしくしおって…」

「後で喰らうのか?」

「馬鹿言え。そうであれば今頃喰ろうておるわ」

「…はぁ…」

「……あ、あのー…」

バッ!!


掃除をしに、お部屋を転々としていました。勿論、妖の皆様が過ごすお部屋でございます

そこである一部屋へ来た時、誰かが話していたので声をかけたら一斉に私の方を見たので驚いたのです

…幹部の方達、でしょうか…?


「き、貴様はっ…!」

「も、申し訳ありません…お部屋を、お掃除したいのですが…宜しいでしょうか?」

「は…?」

「あ!で、でもお取り込み中でしたのならまた改めて参りますので…!」


何やら重たい話をなさっていたので引き返そうとしたら一人の方に「ま、待て!」といわれ振り返ると


「…あ、はい…」

「お主…畏ろしくないのか…?」

「え?」

「貴様、喰われるかもしれぬという畏れはないのか!」

「そ、そうじゃ!大体羽衣狐様が人間を生かしておくなど有り得ぬ!」「例えしょうけら様のお墨付きとはいえ…!いつまでもそうしてはおれぬぞ!」


何を申されているのか、今一私には理解出来ませんでした、が…

要は淀殿に食べられてしまうかもしれないのにこうして普通にしているから…心配してくださっているのですね!


「ご安心ください」

『へ?』

「心配してくださっているのですよね?私なら大丈夫です」

「い、いや!わしらは…!」

「私は覚悟の上、ここに居ますので」

「…」

「最期の時までしょうけら様のお傍に居られても、淀殿に食べられてしまうかもしれなくとも…私は構いません」

「あ、有り得ぬ…」

「?」

「羽衣狐様を畏れぬ人間など有り得ん!!」

「っ」

「貴様も本当はどこかで我等妖を畏れておるのだろ?だから喰われぬようそうやって気に入られようと振る舞いておるのだろう!」

「…」

「それ以外羽衣狐様や幹部の者が人間如きの貴様に目を向けぬわ!」


…気に入られるように振る舞いて…か。そんな事していなかったのですが…

一部の妖様にはそう見えるのですね…どうやったら信じてもらえるのでしょうか


「わ、私は決してそのような事…」

「人間風情が…!」

「我等と同じように過ごせると思うな」

「…っ」


堪えなくてはいけない

ここで弱音を見せてまた皆様にご迷惑をかけては…強気を見せなくては…


「私はっ…気に入られようとこうして頑張っているのではありませんっ」

「何…?」

「私がこうして過ごせているのも皆、淀殿やしょうけら様…皆様のお陰です!だから私は恩返しで…!」

「そういう考えこそ馬鹿だというのだ!」

「私は淀殿だけではなく貴方方の事も畏れていません」

「貴様っ」

「妖だからと言って私は畏れて逃げたりはしませんっ」

「一度痛い目をみなくては分らぬのか…!」

「我等は人間風情の貴様が気安く羽衣狐様に近付くなと申して居るのだ!」

「言うことを聞けぬのなら…」


一人の方が刀を抜こうとしていた…私は思わずビクッと肩を震わせたが…


「殺すと申すのでしたら、殺せば良いです」

「っ」

「私を殺して生き肝を淀殿に捧げれば宜しいです!私は怖く、ありませんっ」

「貴様…我等を侮辱するのか!」

「!」


斬られる…!と思ったその時

遠くの方から聞き覚えのある声がした


「…良く見ておるのだぞ。鬼一口…あ奴等自分が羽衣狐様に近づけぬ故千鶴に当たっておるわ」

「嫉妬はいかんなぁ」

「お、お前等!」

「…サトリ様…鬼一口様…」

「ほう…なるほど。あ奴等千鶴を殺してそれを他の妖に罪を擦り付け自分達は助けようとしたと都合の良い事にしようとしておったそうじゃ」

『っ!!』

「いかんなぁあ」

「どうする?羽衣狐様にご報告をしそのまま地獄行きになるか…このまま見逃す故二度と千鶴に手出しをしないと約束するか…」

「ぐぐぅっ」

「くそっ」


ダダダダダッ

私を斬ろうとしていた方達はそのまま走って行ってしまいました

ホッと胸を撫で下ろしていると、サトリ様と鬼一口様が傍に来てくれて


「大事ないですかな?千鶴様」

「あ、はい…有難うございました」

「幹部の中には千鶴様を良かれと思わぬ者が数名おりまして…奴等がその者でしょう。これからは我々が影で目を光らせております故ご安心を」

「…有難うございます」

「…」

「何を照れて居るのじゃ、鬼一口」

「あいたっ」

「…」

「千鶴様。ご自分の意思に自信を持って構いませんのですぞ」

「え?」

「貴方のご意志はまことに素晴らしい…ですので羽衣狐様も、幹部の者もそして我々も千鶴様をお慕いしておるのですから」

「…はい」


サトリ様のお言葉はとても心強くて私を安心させてくれた

これからも先ほどの事があるかもしれない…でも、私は挫けません

私を信じてくれている方々のために…




「千鶴」

「しょうけら様」

「大丈夫か?」

「え?」

「サトリから聞いた…千鶴を良く思わぬ輩に斬られそうになったと…」

「ぁ…その事でしたら大丈夫ですよ」

「…すまない」

「ど、どうしてしょうけら様が謝られるのですか?」

「…いつもそうだ。私はお前を守ると言ったのにそうやって肝心な時に私はお前の傍に居ない…」

「…」

「ずっと傍に居てやれない自分が憎い…すまない」

「私も…自分が憎いです」

「え」

「しょうけら様をこんなにも苦しめて…」

「そ、そんな…!私の事など…!」


私だっていつまでも守られていては駄目

安心していてもらいたいのです…


「しょうけら様。見ていてください」

「…?」

「私…しょうけら様が常に安心出来る様に強い女になってみせます」

「っ」

「そうしたらしょうけら様もご自分のお仕事に集中出来ますよね」

「…千鶴」


フワッ

すると、急にしょうけら様が私を抱きしめてくれた


「お前は…今のままで良い」

「しょうけら様…」

「何度も言っただろ?…千鶴を守る事が私の役目…迷惑も何も感じていない」

「…」

「今のままでも十分頑張っているのだ…これ以上何を頑張ると言うんだ?千鶴こそ無理はしないでくれ」

「…はい」


「…と、いう事で私は朝から晩までずっと千鶴の傍にいる事にします」

「何がと、いう事でじゃ」

「…しょうけら様…」

「今後また同じような事があったら大変です。ご安心を淀殿…私の変わりにこの茨木童子が」

「死ねカス虫」

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最後のしょうけらの扱い酷かった…

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