「千鶴様、何かお召しにならないとお体に障ります」

「…」

「…千鶴様…」


何も食べられない

色々な感情が積み重なって…もうどうして良いかも分からない

大阪城へ戻った後、淀殿に謝りに行ったのですけど淀殿は良い。と言ってくださっただけ…

他の皆様にもご迷惑かけて…お母ちゃんに会いたかったけど、皆様にご迷惑をかけてまでは…私、間違っていました


「…千鶴の様子はどうじゃ?」

「はい…今朝から何も口にせず…先ほども手をつけてはもらえませんでした」

「そうか…戻ってよいぞ」

「はい」

「……はぁ」

「千鶴や」

「!…よ、淀殿…!」


ため息をついた途端、淀殿が訪れてくれたから慌てて頭を下げた

昨日あったばかりで…とても気まずいです…

やはり淀殿は内心ではお怒りになっているに違いませんし…


「何も食べておらぬと聞いたぞ?それでは身体がもたないだろうに」

「…食欲が、なくて…すみません」

「…千鶴や、昨日の事は…全て妾の責任なのじゃ」

「え」


バッと頭を上げれば今まで見た事のない淀殿の悲しい表情が見えた

何故そのような表情をなさるのですか…淀殿は何も悪くはありません


「千鶴の父君からの文を読んだ瞬間、頭を過ぎったのは千鶴の悲しい表情であった。妾があれを見せれば千鶴はきっと悲しむ…そう思い隠した。だが甘かった」

「…」

「こんな事になるのであったなら…最初からそなたに見せれば良かったのかもしれぬのう。より悲しい思いをさせてしまいすまぬの」

「あ、謝らないで下さい…謝るのは、私の方でございます」

「?」

「私は文を読んだ時、確かにお母ちゃんに会いたかったです…でも、皆様にご迷惑をかけてまで会いに行くなんて私は出来なかったのに…私、感情任せにあんな…申し訳ありませんでした」

「千鶴」

「家を出る時からお母ちゃんにはもう会えないと決意していました…なのに…」

「もう良い。そんなに自分を責めるでない」


お母ちゃん…ごめんね、お母ちゃんに会えないけど…でも私ずっと想ってるからね

私はもう皆様にご迷惑をかけたりしない


「おぉ、そうじゃ。昨夜茨木童子に打たれたらしいのう」

「ぁ…はい」

「腫れは既に引いておるようじゃな…大事無く良かった」

「…」

「…あんな不器用な男でも、本当はそなたの事を心配しておったのだ」

「え?」

「今や千鶴を想う者はしょうけらだけではない、と言う事じゃ。皆千鶴を大切に思うとる」

「…淀殿」

「それに…茨木童子は唯一自分を受け入れてくれた父親を目の前で失うとるからのう」

「…っ」

「そなたにも、同じ思いをさせたくなかったのじゃろうな」


茨木童子様の…父親が目の前で?

…私、何も知らず…きっとお辛かったでしょうに

やはり茨木童子様はお優しい方ですね







「――茨木童子様!」

「…?」


――お礼が言いたい――

そう思い私は茨木童子様を探し続けてやっと見つけたのです


「なんだ?カス虫の居場所なら知らねぇぞ」

「(カス虫…)あ、いえ…今日は茨木童子様に」

「あ?」

「あの……昨夜は有難うございました!」

「、」

「私を叩いてくださって…私目が覚めたのです」

「……おま、そういう趣味があったのか…?」

「…え…」

「叩かれて礼言うなんて…俺はねぇぞ!そういう趣味はッ!」

「ち、違います!何故そうなるのですか!」


誤解されてしまいました…私にだってそういう趣味はございません。

慌てて訳を話した


「そ、そうではなくて!あの時叩かれていなかったら私、ずっと逃げようとしていました。皆様にご迷惑をかけて、自分を見失う所でした」

「…」

「ですが、茨木童子様に叩かれて私やっと気づいたのです…だから、有難うございます」

「…いや」

「それに私知っています……あれが、茨木童子様の優しさなのだと」

「っ!!」


茨木童子様は確かに不器用なお方

ですが、優しさは必ずあるのです

私はそれを知っています


「ば……馬鹿野郎!誰が優しいだ!あの時は本気で煩ぇって思ったからやっただけだッ!!」

「はい」

「そ、そりゃあ後から強く殴り過ぎたかもとかは思ったが…って何言わせやがんだッ!阿呆女!」

「はい」

「〜〜ッ!!もう用ねぇなら俺は行くぞ!」


素直ではない所も、茨木童子様らしいです

本当に有難うございます。



※草陰

「全く…茨木童子も素直ではないな。嬉しいなら嬉しいと申せば良いものを」

「…おい。何か可笑しくないか?」

「ぎゃははっ何がだ?」

「何故千鶴と茨木童子なんだ…あそこは私が立つ場だろう?」

「お前が昨夜茨木童子の代わりに叩いていればそうなっていただろうな」

「千鶴に手を上げるなど万死に値する…!!」

「はいはい」

「!?」

「しかし、この調子で行ってしまえば次からはこうなってしまうかもしれぬぞ」

「「?」」


"◎ぬら孫
君がくれたもの
┗茨木童子夢"

バーンッ!!!


「許されてたまるかあああ!!」

「現代語で言えばフラグとか言う奴だな!ぎゃはは」

「私の方が千鶴を慕っているんだ!あんな無知な男に負ける筈がない!今から茨木童子と対決だ!」

「あ!?しょうけらあああ!」

「…京妖怪ともあろう者が一人の人間の女にこれ程執着するとはな」

「鬼童丸?」

「…いや、なんでもない」


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まさかの茨木フラグ!?
なんて、ありませんよ。今後もずっとしょうけらだよ←
生々しい話もチラホラ…ゲフンゲフンッ!!

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