「淀様。千鶴様宛に文が届いておられるのですが…」

「何?…持って参れ」

「はい」


千鶴宛…親からの文であろう

本来なら妾が見て良いものではないが、千鶴は妾等と共に居る限り妖から狙われる

親だと偽りおびき寄せるのも少なんだ


「これでございます」

「うむ。下がって良いぞ」

「失礼します」

「……どれ」


静かに文を開け中身を見ると…


「……っこれは…」


千鶴の母親が危篤状態故会わせて欲しい…

それはつまり千鶴を外へ出し一度帰らせるとの事

護衛を付ければ問題ないが…きっと千鶴は悲しむであろうぞ

ギシッ

後ろから板が軋む音がして慌てて振り返ると、そこには


「…なんだよ」

「なんじゃ…茨木童子か」


茨木童子で安心した

もし千鶴だったらと思うと……妾でもこれ程まで焦るものなのじゃな


「夜の会議、出れるよな?」

「うむ。先程家臣の者と時間の調整をした故大丈夫じゃ」

「…今何隠したんだ?」

「、」


…茨木童子ならば良いか

妾は文に書いてあった事を茨木童子に話した

お前ならば分るであろう…親を亡くす悲しみを…


「…」

「妾はこれを内密にしようと思うのだがお前はどう思う?」

「…正しい判断じゃねぇの…?」

「っ」


茨木童子はそのまま静かに部屋を出て行ってしまった

…正しい判断…そうか、そうじゃな


「淀殿、少し宜しいですかな?」

「しばし待て。すぐ行く」

「はっ」


パサッ

嗚呼、何故妾はしっかりと隠さなかったのじゃろうな



「――淀殿…あれ、居ない…………ん?」

パサッ

「…………え…」


「何…?千鶴の親が?」

「あぁ。羽衣狐は伏せておくみたいだぜ」

「千鶴が悲しむからか?」

「…お前はどう思う?」

「私も伏せておくべきだと思う」

「…」

スゥッ

「羽衣狐様」

「うむ…では会議を始めよう」


いつも通りの会議

徳川との事を話し、生き肝を喰らい、流れてゆく

…やや子が喜んでおる…千鶴も喜んでくれたのう。やや子が腹の中にいると言えば自分の事のように笑ってくれて…


「―――が、――で」

「――だ――?」

「…」


許しておくれ、千鶴

妾は…妾等は…お前には笑っていてほしいのじゃ

お前に悲しい顔は似合わぬ…


「―――淀殿、ご決断を」

「うむ…――」

















「…千鶴様、こんな遅くにどちらへ?」

「え…えと…少しお散歩に行きたいのです」

「なりませぬ。夜は妖の力を増します。危のう御座います故どうかお部屋へお戻りに」

「…い、嫌です」

「……へ?」

「わ、私は行きたいのです!そこを通してください!」

「あ!?…お、鬼一口!」

「ここは通せませぬぅ〜………あれ?」

「おのれ馬鹿者おおお!…千鶴様ぁ〜!」

「…」

「…これは…いかん…」























「では、そろそろ会議を終えるか」

ザッ

「羽衣狐様!大変でございます!」

「おい、まだ会議中だぞ!」

「良い…何事じゃ?」

「そ、それが――――」


この時妾は初めて全身の血の気が引いたのじゃ

たった…一人の人間の女子の事で

千鶴…お前が妾等にとってどれ程大切か分っておるかえ?

今やしょうけらだけではないのじゃぞ…

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