元気そうで何より

「――千鶴」

「ん?」

「よく町に出てこられたね。"秀頼様"のお傍に居らんくて大丈夫なん?」

「ぁ…えと」


冬子に言えない…本当は秀頼様の側室なんて只の口実だなんて

しかも妖と共に暮らしているだなんて…口が裂けても言えない


「えと…今秀頼様のお使いの方達と来ててね。秀頼様が住みなれた町で見てくると良い、って」

「へぇ優しいんやね、秀頼様……で、そのお使いの方は?」

「…逸れちゃったの…人混みで」

「それいかんやん!一緒に探そう?きっと千鶴の事探しとるよ」

「冬子…うん」


冬子が一緒なら不安が吹っ飛ぶ

京へ移ってきた時から冬子に頼りっぱなしだったよね、私


「冬子ごめんね」

「え?急にどないしたん?」

「私、京に来てから冬子に頼りっぱなしで…私は冬子に何もしてあげられなくて」

「…何言うとるんや千鶴」

「え」

「ウチだって千鶴に助けてもらってたんやで。手伝いとかで忙しい日とかは千鶴、妹と弟の面倒よう見てくれるやん。凄く大助かりしとったんやで」

「…冬子…」

「まぁ妹や弟は千鶴姉ちゃんに会いたいーって駄々捏ねて大変やけどね」


苦笑いをする冬子

嬉しかった。冬子にそんな事を言ってもらえて

やっぱり冬子は私の一番の友人だ…


「……千鶴様」

「っ…あ」

「お探ししました。そろそろ戻らねば秀頼様がご心配なされます」


しょうけら様に会えたと思ったら何故か他人行儀

……あ、そっか…冬子が傍に居るから…合わせてくれているのですね

私も、合わせなくちゃ…


「ご、ごめんなさい」

「…誰…?」

「一緒に来てくれたお使いの方…冬子、私行かなきゃ…」

「そっか…元気でね」

「うん…冬子も。風邪とか引かないでね………あ」

「ん?」

「お母ちゃん元気?病気の方良くなってる?」

「ぁ……う、うん!良く、なっとるよ」

「そっか。良かった…それじゃあ」

「うん…」


良かった…お母ちゃん元気そうで

今度はお母ちゃんやお父ちゃんの元気な姿見れると良いな


「あ、あの!」

「…?」

「千鶴の事…よ、よろしくお願い、しますっ」

「…承知した」


「千鶴、すまなかった。私が油断してしまったばかりに」

「い、いえ!私ももう少ししっかりと握っていれば……ですが」

「?」

「少しだけでも、友人と話せて嬉しかったです…また改めて淀殿にお礼を申し上げねばなりません」

「そうだな」


花火も終わり始めたのか音が無くなりつつある

町の人たちも帰る人が多く見える…少し寂しい気持ちもあります


「寂しいか?」

「えっ」

「千鶴にとって大阪城での暮らしは鳥籠のような生活だ…こういう雰囲気から離れるのは寂しいのではないか?」

「…正直に言ってしまえば…寂しいです」

「…そうか」

「で、でも」

「?」

「しょうけら様や、皆様が居てくださるので私は平気です」

「…千鶴」


今の私は、しょうけら様がお傍に居て下さればそれだけで良い。後は何も要らない…

それ程私はしょうけら様の事……


「見つかったのか」

「迷惑かけさせやがって」

「も、申し訳ありませんでした」

「無事見つかったのだから良いではないか」


後で鬼童丸様から聞いた

いつも喧嘩をするお二人が意気投合して私を探してくださっていた事

それを聞いた途端とても嬉しくなりました

彼等は本当に悪い妖ではない…私は心からそう思いました



「姉ちゃん!花火綺麗だったね!」

「姉ちゃん?」

「…言えへんよ…千鶴には絶対、言えへん……おばさんの病気が悪化しとるなんて…」

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