やっと言えました


「そうかそうか。上手くいったのじゃな。良かったのうしょうけら」

「…あ、まぁ…はい…」

「…//」


しかし上手くいったのだというのに何故それ程距離を取っておるのじゃ?

もう少しくっ付けば良いじゃろうて……さては呼びに行かせた鬼童丸と茨木童子に見られたのかえ?

ほほほ、ほんに二人は初々しいのう


「……よ、淀殿」

「なんじゃ?」

「千鶴に全てを明かそうと思います」

「…」

「既に私の事を千鶴に話しました。しかし千鶴は畏れもせず受け止めてくれました…だから、全てを話そうと思います」

「もう、そのような時期なのじゃな…良いじゃろ。お前の口で全てを打ち明けよ」

「はっ」

「?」


さて…千鶴は一体どんな表情を見せるのか…

例えしょうけらを受け入れたとしても妾や他の者を受け止めるとは限らん

鬼童丸や茨木童子は鬼じゃ…狂骨とてしょうけらよりは[畏れ]がある。何より…ここには鬼が多すぎる

千鶴のように内気で可弱い女子が受け止められるのじゃろうか


「千鶴」

「はい…?」

「此方に仰せられる方こそ我々の主(あるじ)…妖、魑魅魍魎の主、羽衣狐様だ」

「え」

「他の皆も…鬼童丸も茨木童子も狂骨も、皆…妖だ」

「…っ」

「…千鶴や」

「は、はいっ」

「妾は確かに妖じゃ。"淀"という人間の女の皮を被ってこの京を支配し続けてきたのが妾、羽衣狐じゃ」

「…じ、じゃあ…大阪城に…妖っの…」

「そのような噂が出回ってしまったのは妾の不覚じゃ…しかし、今この場に居る奴等は皆妾の配下じゃ」


[畏れている]…今の千鶴の表情は正しくそれ

やはり…同じであったか。千鶴も…他の女子と

特別な能力を持つ女子を大阪城に招いて生き肝を喰ろうた時もそうじゃった。皆最初は秀頼の側室として来ておったからのう

最初は妾に気に入られようと愛嬌を振るうが、一人の生き肝を喰らえばその表情は歴然…皆[畏れ]、逃げ纏う

千鶴……お前も…妾から逃げるのかえ…?


「逃げんじゃねぇぞ」

「っ…茨木、様…?」

「しょうけらは逃げずにお前に全て話したんだ。だったらお前も逃げも隠れもせず正直に思った事を話せ」

「!」

「恐いのなら恐いと申して良い。他の女子も同じであったしの」

「…」

「千鶴…」

「…わ…ま……ん」

「?」

「恐くっ…ぁりま、せん…」

「っ」


恐くないじゃと…?よくそんな震えた声で言える口じゃろうて


「それは真か?」

「え?」

「妾や他の者を恐くないと申すのは真かと聞いておるのじゃ」

「…は、はい…」

「そのように震えておるのに面白いですな」

「…大天狗殿」

「いや大天狗の言う通りじゃ。千鶴や何故そう申せる?」


千鶴…何故お前は震えておるのじゃ?…妾はどんな目でお前を見ておる?

他の者も自分が妖であると言わんばかりに妖気を出しておる。では妾も出ておるのか?

だからお前はそれ程震えておるのかえ?


「…駄目なんです…」

「?」

「皆様を、恐いと認めてしまっては…駄目なのです」

「どういう意味だ?」

「妖が目の前に沢山居て恐くないと断言出来る方などどこにも居ません…人間は皆妖を畏れているので…」

「何故じゃ?今の言葉では矛盾しておるとお前でも分っておるじゃろ」

「ですがっ…皆様は私に沢山話しかけてくれました…!」

『っ』

「初めて大阪城へ来た時は皆様の事とても恐かったです…ですが、ここで過ごしている内に本当は皆様お優しい方だと知りました…だから、私はっ"皆様の事は"恐くありません」


…嗚呼…なるほど、そう言う意味か

千鶴は妖を畏れている…しかし妾等の事は畏れていない。

随分と…優しいというか、肝の据わった女子じゃ


「…ほっほほほ!」

『!』

「よ、淀殿…?」

「これ程面白い女子は初めてじゃ。しょうけらの言う事も分る」

「…」

「皆の者も思うじゃろ?妖を畏れておるというのに妖の妾等は畏れていないと言うのじゃぞ?これ程の余興は初めてじゃ」

「…まぁ…確かに」

「只の阿呆なんじゃねぇの?」

「!」

「茨木童子…」

「ほほほ」


それからというもの、人間に化けて居った部下達がそれぞれ妖の姿に戻り千鶴に話しかけていた

と、言うがな…部下達の一方的で千鶴は驚いておった

まさかこうして人間の女子と戯れるとは思わんだ

妾にとって女子供は力の礎としか考えてなんだしのう…だが、千鶴は特別じゃ

これからもしょうけとの行方、楽しみにしておるぞ



「やっぱり恐いですっ!」

『なぬっ!?』

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テーマ「人外ファンタジー」
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