この気持ちの正体


「千鶴。どこも痛む所とかはないかえ?」

「あ、はい…」


昨夜、私の部屋に妖が現れたらしい…でも私はあまり覚えていない

覚えているといえば…月明かりが照らす暗い部屋に…何か……虫…?


「あの…淀殿」

「なんじゃ?」

「しょうけら様は、どちらに…?」

「…」


普段ならいつも私のお傍に居てくれる筈なのに…

一体…?淀殿も黙っておられて……まさかしょうけら様の身に何か…!


「あ、あの淀殿。もしや私のせいでしょうけら様の身に何か…?」

「なぬ?」

「昨夜妖が現れたのですよね?その時どこかお怪我でもされたのでしょうか?」

「千鶴…」


とても心配です。しょうけら様はいつも私を守って下さる…でもそのせいでしょうけら様が傷つくのは嫌です

黙って淀殿を見つめると淀殿は一息つき


「千鶴はどんな真でも受け止める覚悟は出来ているかえ?」

「え…?」

「妾等は千鶴に重大な秘密を隠しておる…それを受け止める覚悟をそなたの小さい心にはもって居るのか?」

「…―――はい」

「そうか…では昨夜千鶴が見た者は―――――」



「しょうけら様…」

「"…"」


しょうけら様のお部屋に行き呼んでも何も答えてくれない

…あ、諦めては駄目…ここで諦めてしまったらもう戻れなくなってしまう


「しょうけら様…千鶴でございます」

「"…"」

「あの…お話したい事があるのです。入っても宜しいでしょうか?」


聞いても返事はなし…駄目とは言わないので、入っても良い…との事でしょうか…?

恐る恐るゆっくりと襖を開くとしょうけら様が私に背中を見せ座っていらした

ゆっくりと近付きしょうけら様の後ろに座ると…しょうけら様が口を開いて下さった


「…どこも、怪我はないか…?」

「はい…しょうけら様が守って下さいましたから」

「…」

「…しょうけら、様…?」

「千鶴は、昨夜…私の姿を見たか…?」

「…」


淀殿から聞いた…あの虫のような方はしょうけら様だと…

最初は驚いた。でも…


「お前にとってはあの姿はとても醜い…例え神から授かったと言っても千鶴にだけは見せたくなかった…」

「…」

「私の事…嫌いになっただろ?」

「っ……そんな事、ありません」

「、」

「私はしょうけら様の事を嫌いになったりしません」

「そんな嘘は良い。正直に言え」

「嫌いになったり、しません」

「っ何故嘘をつく!私のためだと思っているならそんなものは要らない!正直に言え!」

「嘘など言っていません!」


振り向いたしょうけら様の手を強く握って嘘ではない事を言った

初めてしょうけら様が怒鳴られた…しかしその表情はとてもお辛い…どれ程しょうけら様が苦しんだか想像がつく

しょうけら様のお辛い気持ちを考えると私まで胸が苦しくなり出てきそうな涙を堪えながら


「私を助けて下さった方をどう嫌いになれというのですか…!」

「っ」

「貴方様は…私を二度も助けて下さった命の恩人ではありませんか!そんな方を嫌いになれませんっましてや姿など…関係ございません…!」

「…」

「二年前…私を助けて下さったのもしょうけら様だったのですよね」

「まさか…記憶が?」

「はい。全部しょうけら様のお陰です…やっと、あの時のお礼が言えます…有難うございました。私を助けて下さって」

「…千鶴…!」


しょうけら様が私を強く抱きしめてくれた

私は今まで何故気づかなかったのでしょう……私は…しょうけら様の温もりが好きなんですね

こんなに胸が熱くなる思いは初めてです


「私は畏れていた…もし千鶴に嫌われたらと思うと…どうしたら良いか分からなくなってしまっていた」

「しょうけら様」

「こんな気持ちは初めてで…千鶴、私はお前に惚れている」

「えっ」

「お前に惚れているからこそ、これ程深く考えてしまうのだな」


し、しょうけら様が…わ、私を…?

急な事で何を言って良いのか分からない…顔がとても熱い…きっと真っ赤なのでしょう

でも…もしや私もしょうけら様に惚れているのかもしれない。しょうけら様と居るととても安心出来て心が擽られるような気持ちになるのです


「…千鶴」

「は、はぃ…」

「私とこの先もずっと共に生きてくれないか…?」

「っ」

「私が……妖、でも…傍に居てくれないだろうか」


しょうけら様が…妖…?

……やっぱり――――


「今まで隠していてすまない…しかし私はまた畏れていた。千鶴に気づかれ嫌われたらと思うと言い出せずに日が過ぎていった」

「…」

「だが、今なら全て隠さず言える。私は妖で千鶴は人間だ…他の妖から見れば私は可笑しな奴だと笑われる…しかし私はお前に惚れた。これは偽りのない言葉だ」

「しょうけら…様…」

「私はこれからもお前を守りたい。傍でお前を見ていたい…もう遠くから見ているだけでは私の心は満たされないんだ。だから千鶴…私と一緒になってくれ」


妖は恐かった…人間を平気で殺す妖がとても…

でも、しょうけら様は違う。私を何度も守って下さる…そんな方が恐ろしい妖だとは思えない

この方なら…私は…


「…はい」

「え」

「私はこの先もずっと、しょうけら様と共に生きます」

「千鶴…それでは」

「私も、しょうけら様に惚れているみたいでございます」

「…!」


ギュッ

相手が妖であろうと、私はこの方に付いてゆく

妖と共に生きてはいけないと誰がお決めになりましたか?誰もそんな事は言って居ません

だから私は…ずっとしょうけら様のお傍に居る
























「…どうすんだよ」

「どうするも何も今の状況で入るのはさすがにまずい…」

「…」

「…」

「…(イライライラ」

「(茨木童子!気配を消せ!気づかれる!)」

「(ぷちんっ)…後は任せた」

「(せ、拙者を一人にする気かあああ!)」

「…お前たちそこで何をしているんだ」

「「はっ…!?」」
.

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -