俺とじゃなくて何!?



「千鶴や。少し良いか?」

「あ、はい」














「おい」

「なんだ?」


いつものように千鶴の部屋へ行こうとしたら茨木童子に呼び止められた


「あの女の事だ」

「…千鶴がどうした?」

「なんでお前の事忘れてるか分ったぞ」

「ッ、何?」

「知りてぇだろ」


何故千鶴が私の事を忘れているのには理由があるというのか?

黙って茨木童子を見ながら頷くと


「じゃあ今までの俺に対する行い今すぐここで懺悔しろ」

「今すぐ地獄へ落として良いか?」

「なんだよ出来ねぇのかよ」

「何故貴様に懺悔をしなければならない。貴様にするくらいなら毎日踏んでる石に懺悔する方がマシだ」

「おいそらぁどういう意味だクソ虫野郎」

「そういう意味だ。馬鹿」

「この野郎…上等だ今すぐ表出ろ。どっちが上だか教えてやる」

「フンッ神に逆らう無知な男め。今ここで懺悔させてやろう」


バチバチバチと火花が散る中

東方から声がした


「茨木童子!本来の目的とはかけ離れているぞ!」

「邪魔すんな鬼童丸!もう我慢できねぇ!」

「冷静にならぬか!」

「……そうだ。千鶴は何故私の事を忘れてしまったというんだ」

「テメェにはもう教え「茨木童子!」

「チッ……詳しくは羽衣狐が来たら教える。そこで待っとけ」


なんなんだあいつは

教えると言っておきながら…やはり無知で馬鹿な男だ

しかし…千鶴が単に私の事を忘れていたのではないという事、か



「ふむ、集まったか」

「淀殿…千鶴の事で」

「そうじゃ。しょうけら…千鶴は記憶を喰らう妖にお前の記憶を喰われた可能性が高い…話を聞いたところ2年前の記憶が無いとの事じゃ」

「っ」

「そのような妖が京に居た筈は…」

「きっと他から来た妖じゃろうに。それならば千鶴だけがしょうけらの事を忘れていた事も辻褄が合うというものよ」

「…妖が…」

「俺に感謝するんだな。俺が昨夜話さなかったら今も分らなかったんだぞ」

「そうか……………待て。何故夜に千鶴の部屋に行ったんだ」

「なんだ?嫉妬か?じゃあテメェも行きゃあ良いだろうが」


こ、こいつ…!

未だ夜に千鶴の部屋に行けない私への嫌味か!


「喧嘩はやめぇ…しょうけらよ。2年前何かなかったのかえ?」

「何かと言われても…数名の妖に襲われそうになっている所を助けただけで」

「じゃあその中に居たんじゃねぇのか?」

「馬鹿な!あの時近くに居た妖は全て殺した…そんな訳」

「じゃが…遠くからお前達を見ていたとすれば?」

『っ!』

「そうだな。妖気を消し潜んでいたのなら後で千鶴の記憶を喰う事も出来よう」

「しかし何故千鶴が」

「その妖も面白かったのじゃろう」

「?」

「妖が人間の女子に見惚れているなど滅多に無い事じゃ」

「っ」


では…私のせいで千鶴が…

私はどこまで千鶴を苦しめるのだ…私のせいで親と離れ挙句の果てに記憶まで取られてしまって

ギュッ――

気づくと私は胸元に下げてある十字架を握っていた……私は決めた


「淀殿」

「?」

「この件は私にお任せ下さい」

「…ほぉ」

「またその妖が来るかもしれません…その時は私だけで何とかします」

「出来るのかえ?お前一人で」

「私は千鶴と約束をしました。守ってみせると」


一礼をして部屋から出た

必ず私が千鶴の記憶を取り戻してみせる



「…見せ付けてくれるな」

「全く…あ奴は本当に面白い妖じゃ。ほほほ」

「なんで人間の女にあそこまでするかが分らねぇ」

「なぁー俺出番なし?」

「あったじゃねぇか。題名にテメェの名があったぞ」

「それだけ!?」

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