お散歩


「え…お散歩、でございますか?」


ある日の事、いつものようにお部屋で一人書物を読んでいた

あ、実はこれ淀殿が貸して下さって意外と面白くて…じゃなくて…

しょうけら様が一緒に庭を歩かないかと誘ってくださったのです


「あぁ。ずっと部屋にばかり居ては身体に良くない…それにまだ大阪城の事は知らないだろう?」

「ですが…良いのですか?私が外に出て」

「今秀頼様は外出中で数名同行しているから大丈夫だろう…駄目か?」


駄目だなんて…とっても嬉しいです

私は異性の方と一度も歩いた事がないので嬉しくて緊張しております


「いいえ。是非」

「そうか。では行こう」

「はい」


しょうけら様が手を差し伸べてくださり私は彼の手をとり歩き始めた





「…」


驚いて声も出なかった

さすが大阪城…お庭もとても綺麗で…見ているだけで心が安らぐ

…私…本当に大阪城に住んでいるのですね


「どうだ?千鶴」

「とても綺麗で本当に私のような者が歩いて良いのか戸惑ってしまいます」

「千鶴だからこそ歩いて良い。お前も綺麗なのだから」

「…しょうけら様」


いつもしょうけら様の微笑みと言葉には胸が一杯にさせられてしまう

嬉しくて微笑んでしまうけれど顔が赤くなっていないか心配です


「ぎゃはははッしょうけらーそれが噂の女かー!」

「き、狂骨ッ…!?」

「きゃあああ!し、しょうけら様あああ!あ、あの方はッえええ!?」

「千鶴!お、落ち着け!大丈夫だ怪しい奴ではない!」

「だだ、だって!ほ、包帯…!!」

「ぎゃははッおっ確かに茨木童子の言うとおりだ!」

「はっ…ぅ、あっ」


一体どうすれば良いのか…

顔に包帯を巻いて明らかに人とは思えぬ方が私をジロジロ見てきて今にも気を失いそうです


「狂骨!千鶴が怯えている!今すぐ離r「おぉあれがしょうけら様のお気に入りか」

「…へ…」

「茨木童子様の言うとおり人間の女じゃ」

「しょうけら様も隅に置けぬわ!わははは!」

「…お、お前等…」


…誰か助けて。鬼が出ました…
もう倒れる寸前でございます


「お前等!今しょうけらと千鶴は二人きりで歩いていただろう。少しは空気を読め!」

「…では鬼童丸。お前は何故そんな草陰に隠れているんだ?明らかに見ていただろ」

「どうだお前等。俺の言った通りだろ?」

「茨木童子…!貴様の仕業か!」

「あ?なんだよ良いじゃねぇか。羽衣狐も言ってたぞ。一日でも早くこの暮らしに慣れさせねばとかなんとか」

「慣れさせる意味が違ドサッ

『!?』

「千鶴!?」


もう堪えられなくてその場で気を失いました

これ、夢ですよね?夢なんですよね……誰でも良いから夢と仰って…


「なんでぶっ倒れたんだ?」

「やはり刺激が強すぎたか?」

「お、俺達のせいか?」

「鬼の姿ではまずかったのか?」

「千鶴!千鶴!起きてくれ!」

「何を騒いでおるのじゃ騒々しい……なんじゃこの状況は?」


お母ちゃん…お父ちゃん…

やっぱり私家に帰りたいです





「しょうけら」

「…」

「し、しょうけらぁ…」

「…」

「お、おい、虫野郎」

「…」


その日の晩

しょうけら様は誰とも口を利かなかったという

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