信じます
「…」

「…」


…何故あの方がここにいるのでしょうか

それに何故顔の左側に板があるのでしょうか

逃げたい…


「…あ、あの…わ、私に何か…?」

「あ?」

「す、すすすすみませんっ…!!」


ああああ逃げたい。土の中にもぐりたい…!

や、やはり私みたいな町娘には似合わぬ場所だと思い知らされる


「おい」

「は、はい!」

「…お前はなんだ?」

「は」

「あいつが人間を気に入るなんて滅多にねぇ…お前はなんだ?」

「あ、あのどういう意味か全くわ、分らないのですが」


ち、近いです顔が近いです。恐いです

出来ればもう少し離れてくださると嬉しいです…異性の方とこんなに近くで話すの初めてで…


「茨木童子。何をしている」

「あ?遅ぇぞ」

「煩い。今すぐ千鶴から離れろ。恐がっている」


しょうけら様が透かさず私の前に立ち守るような形になった

とても不思議な方。昨日も私に優しい言葉をかけてくれて


「今すぐ身を隠したほうが良い。もうじき加藤の者が来る」

「また奴等か…何か企んでんじゃねぇのか?」

「その時は淀殿が対処してくれるだろう。私もすぐに身を隠す」

「…」


茨木様と呼ばれる方はチラッと私の方を見ると出て行ってしまった

身を隠す?何故隠れなければならないのだろうか

彼等は淀殿の使いの方ではないの?なら何故堂々としていないのだろうか


「あ、あのしょうけら様」

「千鶴。私が次に来るまで絶対にこの部屋から出てはならない」

「え?どうして」

「お前が大阪城に居る事は淀殿と私と茨木童子と鬼童丸…他数名だけだ」

「な、何故隠すのですか?」

「…」

「しょうけら様…?」


可笑しいじゃないですか。私が大阪城に居る事がそれだけしかいないなんて

もしかして…淀殿は本当に妖と…?やはりあの噂は本当だったの?

では…もしやしょうけら様も…妖…―――?


「千鶴…今はまだ話せないがいつか必ず話そう」

「…」

「だから今は私を信じてくれないだろうか?」

「貴方様、を?」

「あぁ。必ずお前を守るし恐い思いはさせない」

「…」


今、私が言える事は只一つ

…しょうけら様は悪い方ではないということ

彼を信じても…大丈夫そう


「分りました。しょうけら様を信じます」

「千鶴」

「…安心しました」

「?」

「最初は私、この先どうなるか全く見えない不安に押し潰されそうで恐かった…でもしょうけら様の温かいお言葉でその不安も少し無くなりました」

「…神に誓ってお前を守ると誓おう」


お互い微笑み合うとしょうけら様は行ってしまわれた

大阪城に来て2日目…お母ちゃんお父ちゃん…お城で信じられる方が居ました

私…何とかやっていこうと思います



「しょうけら、どうした!震えているぞ!」

「な、なんでもないッ…」

「ぎゃはははッそんなに嬉しかったのか?」

「女にテメェの正体教えたらドン引きすんじゃねぇのか?」

「茨木童子。そんな事をしたら即地獄行きだぞ」

「上等だ。やってみやがれクソ虫野郎」

「やめないか二人とも。我等が騒げば羽衣狐様に迷惑がかかる」

「ぎゃははッぎゃはははッ」

「「…」」

「いや狂骨の方が騒がしいじゃねぇか」

「狂骨。少し黙れ」

「え゛」

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テーマ「人外ファンタジー」
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