2年前だとしても
「しょうけら。話さなかったのか?」

「…」

「?」

「私の事を覚えていないらしい」

「お前は覚えてるのだろう?」

「あぁ…しかし、千鶴にとって私はその程度だったという事だ…今から淀殿に家に帰すよう話してみる」


まだ2年しか経っていないのに…既に千鶴の記憶から私は居なかった

人間とはこのようなものなのか。しかし私はあの日以来ずっと影で千鶴を見守ってきた

"二度も"妖に襲われぬように…

――――――
――――
――

2年前..


「また京に妖が増えたな」


最近京に妖が増えてきた

これも羽衣狐様のお力か…皆、強い力を求め京へ入ってきている


「っ」


遠くで人間が他のところから来た妖に襲われそうだ

…見殺しにするか…いや…羽衣狐様に生き肝を捧げるか…そうするか


「いや…いや!来ないで!」

「ギギギ!女喜ぶのだ。貴様は我が力となれるのだからなぁ!」

「いやああ!」

ザンッ

「ぎゃあああ!」「っ?」

「貴様等、邪魔だ…退け」

「だ、誰じゃああ!」

「退かぬなら…殺るまでだ」


他から来た妖は弱かった

こんな者共が我等京妖怪に楯突こうなど…

全て片付け終わり女を見た……が、私は動けなかった


「ぃや…お、お願いです…た、助け、て…」

「…」


彼女の怯えきった瞳には綺麗な涙が流れていた

それがとても綺麗で…見た目も綺麗なので何故か私は彼女の笑った姿が見たくなった


「…主よ…彼女は生かさなければならないのですね」

「…ひっ」

「安心しろ。私が全て片付けた…もう畏れるものはいない」

「…」

「早く逃げろ。また妖が来る前に」


その日以来、私はあの者の家を見つけ密かに見守っていた


「千鶴ーもう起きて大丈夫なん?」

「うん。心配かけてごめんね」

「…千鶴というのか」


千鶴の微笑みも見た。とても綺麗でつい見入ってしまった

これを…一目惚れ、というのか……私が人間に?

不思議だ…何故こんなにも彼女に惹かれてしまうのか

それからずっと影で見ていた。彼女と話せなくても私は遠くで見ていればそれだけで良いと思った


――
――――
――――――


「何?千鶴を家に帰すじゃと?」

「はい」

「…何があった?しょうけら。嬉しくなかったのかえ?」

「いえ、また近くで千鶴を見れたのは嬉しかったです…ですが」

「?」

「彼女は私の事を覚えていないので…このままここに居ても千鶴が可哀相なだけ」

「お前は本当に面白い妖じゃ」

「?」

「しかし…このままで良いのかえ?」

「…と、言いますと」

「千鶴の事じゃ。このままお前を忘れたまま返しても良いのか?」

「…」


どちらかといえば…嫌なほうかもしれない

もっと千鶴の事を知りたいし触れたいし…何より千鶴の傍で守りたい

…しかし…


「素直になれしょうけら」

「…淀殿」

「千鶴を傍に置いておきたいならそうすれば良い…何をためらうのじゃ?またとない機会なのじゃぞ?このまま千鶴を帰らせればまたお前は遠くからでしか見る事が出来ぬし話すことも出来ぬ…それでは嫌じゃろ」

「…」

「忘れてしまったのなら徐々に思い出してゆけば良い事…のう?」

「はい」


これは…絶好の機会?

そうかもしれない。やっと千鶴と話せるんだ…喜ばなければならない。これもきっと主のお導きだ

しかしどうすれば千鶴は安心してくれるだろうか?今もまだ不安で怯えてるだろう


「安心させねば」


何か面白い話をした方が良いか?

しかし私には出来ないし…散歩、させようか?

……難しい…

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