大阪城にて



「それではこちらでお待ちを…じきに淀殿がお見えになりますゆえ」

「あ、はい」


広い居の間へ連れてかれ淀殿を待つ事に…

それにしても……


「…広い」


こんな広い部屋に入ったのは生まれて初めて

逆に誰も居なくて静かな場所で一人で居るのも恐い

そんな事を思っていると襖が開く音がしたと同時に淀殿が入ってきた


「…お前が千鶴かえ?」

「は、はぃ」

「ほほほ。恐がらなくともよい…こちらへ近こう近こう」


私は言われるがままに淀殿の傍へ座り頭を下げた

恐くて手が震える……それにいつの間にか淀殿の近くには一人の男の人が居た

私をジッと見て…


「表を上げぇ」

スゥ

「ふむ…中々の美女…"鬼童丸"。そちはどう思う?」

「はっ…失礼ながら拙者ではどこに惹かれるのか分りかねません」

「ほほほ。お前等の目では"人間の女子"は分らぬか」


な、何を言っているの?何の話かさっぱり分らない

人間の女子なんて…まるで傍に居る方が人ではないよう…――――
まさか…妖?…いやそんな…でも最近じゃあ大阪城に妖が出入りしているとの噂…


「―――どうすんだ?あいつはまだ戻ってねぇぞ」

「っ!」

「"茨木童子"。お前はこの女子どう見る?」

「…クソ野郎の趣味なんて知るか」


恐い…もう私の感情はそれしかない

どうなっているの?…私は…秀頼様の側室として呼ばれたはず…

誰か…誰か助けて…――!


「"淀殿、只今戻りました"」

「おぉ噂をすれば…入れ」

「"失礼します"」


その時また誰かが入ってきた

他の人と同じく着物を着てはいるがどこか日本とは違う感じ…髪も顔立ちもお綺麗で…異国の方?

その方は私を見るやいやな、目を少し見開いて驚いていた


「淀殿…あの娘…」

「"しょうけら"よ。感謝せぇ…妾が手を貸してやったのじゃ」

「…は?」

「いつまでも遠くからでは面白くもなんともないじゃろ?だからこうして連れてきてやったのじゃ」

「よ、淀殿。話が見えっ」

「しょうけらよ喜ぶのじゃ。今日からこの女子は"お前のもの"じゃ」
「!?」


淀殿は私に触れながら訳の分らない事を言った

私が…この方の…もの?えっ…え!?


「よ、淀殿…わ、私は秀頼様の側室として呼ばれた、のでは?」

「それは只の口実じゃ」


ドクンッ

もう何がなんだか分らない…私はこれからどうなってしまうの?

あの方もあの方で驚いているし…お母ちゃん…お父ちゃん…家に帰りたい


「良かったな。しょうけら」

「……バレていたのか」

「当たり前だ。毎日町へ出かけられちゃあ嫌でも気づく」

「…」

「どれ、少し二人で話してみよ」


そう言うと淀殿たちは出ていかれ、私と…あの方のみになってしまった

まだ恐くて心臓がドキドキしている…恐い…

しばらく沈黙が続くと…


「千鶴」

「っ!…ぁ…は、ぃ」

「…すまない」

「え…」

「私のせいでこんな事になってしまって」


この方は一体誰…?

私の傍に座り優しく言葉をかけてくれる…何故?


「…貴方は…」

「?」

「貴方は、誰なのですか?」
「っ」


問いかけると、一瞬驚いたけどみるみる悲しい表情へと変わって言った

…私…何か気に障る事でも…?


「…私を覚えていないのか…」

「え?」

「仕方ない、か…」


スゥと立ち上がるとあの方は出て行かれようとしたので呼び止めようとしたら

彼が先に振り向き


「疲れただろう。お前の部屋を用意させる…今日はゆっくり休め」

「あ、あの!お、お名前は」

「私の名はしょうけら」

「…しょうけら、様…」


そう言い残すとしょうけら様は出ていかれた

その後私は使いの方に部屋に案内されて今日はもうお休みしました

ですが、不安は未だ消えず…ゆっくりと眠る事など出来ませんでした



「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -