きみがとなりにいる



「?…あ!時風さーん!」

「リクオ様。ご無沙汰しております」

「体調の方大丈夫?猩影君から寝こみがちだって聞いて…本当はお見舞い行きたかったんだけど」

「そのお気持ちだけで私は嬉しゅうございます…あの、総大将様はいらっしゃいますでしょうか?」

「あー…じいちゃんまたどこかに出かけちゃったんだよなぁ。多分もう少しで帰ってくると思うし中で待ってて」

「有難うございます」


本家にまで迷惑をかけてしまって…何と言うことを…

でも、リクオ様は本当にお優しい心をお持ちで…私の事も心配してくださるなんてなんと嬉しい事か


「粗茶でございます」

スゥ

「あ!時風様!お身体は大丈夫なんですか!?」

「氷麗ちゃんにまで心配かけてしまってたなんて…私ったら」

「いえ…狒々様があんな事になってしまって…私も心を痛みました……愛する方を失う気持ちは私も痛いほど分ります」

「有難う…氷麗ちゃん」

「僕も雪女と同じ気持ちだよ…本当に元気になってくれて良かった」

「私もいつまでもくよくよしてては狒々様に迷惑がかかる…それだけはいけないと思いまして…それに私は一人ではないと知りましたので」

「猩影君も居るし…僕達もいるから」

「そうですよ!私達いつでも相談に乗ります!」

「本当に有難う…やだわ。歳のせいか涙脆くて…」


子供達はとても優しい…私は知らず内に守られていたのね

強くならないと…


ガラッ

「おー時風。よう来たのう…身体のほうはもう大丈夫なのか?」

「総大将様ご無沙汰しております。この度はご心配をおかけしてしまって申し訳ありませんでした」

「あー謝るな謝るな。ワシもばあさんを亡くした時は引きこもった覚えがあるからのう」

「それじゃあ俺達は行くね」

「時風様ごゆっくり」

「有難う」


リクオ様も氷麗ちゃんも立派になって…

猩影もきっと…リクオ様に着いていくのかしらね


「時風…元気になったか?」

「はい。もう大丈夫でございます」

「狒々があんな事になってしまったのはワシも心が痛い…あの時ワシがもっと注意深く言っておけば」

「総大将様のせいではございません。狒々様はきっと許せなかったのでしょう」

「?」

「自分が愛した奴良組のシマで悪さをする妖怪が」

「そう言われると恥ずかしいのう」

「ふふ」


それから総大将様とはいろんな話をした

出会った頃の話…確か、狒々様と出会ってから総大将様とも出会ったのでしたね

…懐かしいです


「そういやぁ猩影から聞いたが毎日狒々の墓に行っておるのか?」

「はい。あれでも狒々様は寂しがり屋ですから」

「そうじゃな。昔は時風が居なくなったらすかさず捜しておったからのう」

「わざと隠れて見つからないようにもしましたら後で狒々様に怒られてしまいました」

―時風が心配かけさせるからじゃのうが

「っ」


ふと横を見ると、少し透けた狒々様が私の傍で腰をかけていた

目が合えば狒々様はフッと微笑んでいた…


―言ったじゃろ?ワシはずっとお前の傍に居ると

「…狒々、様」

「ん?どうした?時風」

「え!…あ、いえ…狒々様が傍に、」

「ほう狒々が……きっと時風が心配で見に来ているのだな。のう?狒々」

―大将め、見えぬのにワシに話かけおって…まぁ間違ってはおらぬがな

「…クスッ」


私にだけしか見えないのですね

…嗚呼確かに狒々様は約束を守ってくれている。ずっと私の傍に居てくれているのですね

嬉しい


「…まぁもうこんな時間…総大将様、私はこれで失礼します」

「もう帰るか。またいつでも遊びに来いな」

「はい。是非」

―なんじゃもう帰るのか?来るのが少し遅かったのう

「それでは失礼します」


「狒々様、約束守ってくれているんですね」

「勿論じゃ。もう時風の悲しむ顔は見たくないからのう」

「嬉しいです…狒々様」

「総大将と何話してたんじゃ?」

「昔の事を…出会った頃の話とか」

「それで笑っておったんじゃな」


屋敷を出てすぐ狒々様は実体化をしてくれた

お陰で手を繋いで帰れる…何百年ぶりでしょうね。貴方と手を繋いで帰るなど





「今度また、猩影も連れてどこかへ行くか」

「そうですね。きっと猩影も喜びます」



ずっと貴方が傍に居てくれれば、私は寂しくはありません