空白を埋めるように




「お袋、最近表情が明るくなってきたけど何かあったのか?」

「ふふ…何でしょう?」

「勿体ぶるなよ」


きっと猩影も驚くだろう

私が今居る筈のない狒々様と…貴方の父親と居る事を…


「私出かける事多いでしょ?」

「確かにそうだな…どこに行ってるんだよ」

「狒々様のところ」

「……毎日親父の墓の前で話してんのか?」

「うぅん…狒々様そのものとお話をしてるの」

「…」

「猩影も会いに行きましょう!きっと狒々様も喜ぶに違いないわ」

「ちょっお袋!親父はもう居ねぇんだぞ!」

「狒々様が私を心配して会いに来てくれたの…ほら早く」

「ちょっまっ!…お袋!」


猩影を引っ張って狒々様のお墓の所へ連れて行った

きっと驚く…いや絶対に驚く……猩影泣くかしら?


「お袋っ…!」

「猩影…ほら」

「え?…………っ」

「狒々様ー!」

「ん?…おー時風…っと」

「…ぉ…や、じ」

「時風は本当に急じゃな…猩影」


傍に居た猩影は少し震えていた。会えて嬉しいのね

狒々様が亡くなって真っ先に仇を討つと言って本家へ向かって行ったもの…

ゆっくりと背中を押すと猩影は私を見て私は微笑むと、猩影はゆっくり歩き走り出した


「親父ー!」

「なんじゃまだまだ子供じゃな猩影は」

「の、馬鹿野郎おおお!!」

「グハアア!」

「えええええ!!?」


猩影の拳が狒々様に命中して飛ばされた狒々様

え?え?こ、これはど、どうすれば…!


「っつー…いきなり親を殴るとはなんじゃ!」

「何度でも殴ってやるよ!勝手に行って勝手に死にやがって!どれだけみんな悲しんだと思ってやがんだ!!」

「(それはそうだが…殴られるなら実体化するんじゃなかったわ)」

「それにっお袋を悲しませやがって!何がお袋を泣かすんじゃねぇぞだ!親父が泣かしてんじゃねぇか!」

「っ」

「…猩影…」

「なのにっこんな、普通に居て…当たり前のように俺の名前っ呼んで…!馬鹿親父!」

「猩影…!」


私は駆け寄り大きい猩影を抱きしめた

ずっと心に溜めていた気持ちが爆発したのね…身体は大きくても猩影は心は小さいから

そこは私に似たのね


「全く…痛いところを突かれるなァ」

「馬鹿、親父…!クソジジイ!」

「クソジジイとはなんじゃクソジジイとは」

「…やっと…家族が揃いましたね」

「…ぅっ…っ、!」

「…そうじゃな…ようやく」


狒々様の大きな存在で私と猩影を包み込んでくれた

久しぶりの家族の隙間をようやく埋められた…長かったけどようやく


「止めろよ…ガキじゃあるまいし…」

「私達から見ればまだ子供よ…ね、狒々様」

「そうじゃな。猩影はまだクソガキじゃ」

「…」

「連れて来て良かった」


願わくばこのまま時が止まってほしい

ずっと家族このままで居たい

神様…お願いします。どうか…どうか………







「ぉわっ!?」

「お、猩影。ワシと同じ事しとるわ」

「誰だよここに段差作った奴…責任者呼べ!」

「ふふ…狒々様と同じ事も言ってますよ」