「茨木童子。おじさん褒めてたよ。腕上がったって」

「そうか?」


茨木童子は不器用だけど優しい人

そんな彼に私は思いを寄せてる。きっと茨木童子は何とも思ってないだろうけど

それで良い…傍で話せるだけでも嬉しいから


「私も今度切ってもらおうかな」

「…男になりてぇのか?」

「ち、違います!そ、揃えてもらう…程度…」

「はいはい。その内にな」


いつも私だけその内、その内って言って切ってもらえない

他の人たちは切ってもらえるのに

別に私は下手でも良いのに…それとも私嫌われてる…?


「わああ!嫌われてたらどうしよー」

「大丈夫だよ。嫌われてないわよ」

「で、でも…」

「きっと茨木さんも恥ずかしいのよ」

「…」

「この際思いを伝えてみたら?」

「無理無理!顔から火が出るっ」


茨木童子は結構他の子達にも人気がある

以前だって偶然茨木童子を見つけて近寄ると何か文みたいなの読んでいたからこっそりと見たら


「っ!!!」

「な、んだよ名前。後ろで変な声出しやがって」

「あ、ああ…あ!こ、ここっこ!」

「はぁ?」

「※○□い%#あ×ー!!」

「おーい!!」


それが恋文である事が分かると私は急に恥ずかしくなり言葉にならない声を発して逃げてしまった

あれは一番恥ずかしい経験でした。その日を境に私は村の人から変人と思われた。勿論茨木童子が噂を広めた張本人

でも茨木童子と話してると落ち着く自分がいる。この先ずっとこうしていたいと思った…


「どうしたの?茨木童子。考え込んで」

「なんか俺忘れてんだよな」

「何かって何?」

「さぁ…知らねぇよ。んな事」

「…思い出すと良いね」

「おう……名前」

「ん?」

「…いや、何でもねぇ」


茨木童子…貴方が忘れてることって…思い出してよかったの…?

どうしてそんなに哀しい顔をしてるの?

折角…忘れてた事を思い出したのに…哀しい顔、しないで…





それが起こったのはある日の事

私は親に頼まれた山菜を取った帰り、何やら里が騒がしかった。持ってた山菜を捨て走って戻るとそこは見るも無残な姿になっていた

民家には煙が上がって、道端には切り落とされた見覚えのある人たちの死骸…

いきなりの事で頭の中が混乱していた…でもふと頭に浮かんだのが


(…茨木童子…)


無事なの…?無事でいて…!

走り回って探した…思いを寄せる彼の姿を


「ぁ…居た!」


茨木童子の後姿が見え声をかけようとした時、足が止まった

徐々に此方を振り返る彼の衣服には…誰かの血がべっとりとついていた…それは紛れもなく自分じゃない血

まだ私には気づかない彼は


「血うめぇ」

「…ぇ」

「?まだ居たのかぁあ」

「い、茨木…童、子…?」

「テメェの血吸わせろおお!!」

「っ…―――!!」


ザシュッ!!!

痛いを通り越して熱い感覚が全身を通った

倒れていく自分の身体…最後に見えたのは惚れたあの人の…か、お……



















「…名前」


気が付くと俺の身体は血まみれだった
俺は鬼だ。血が好きだ

だが俺の目に飛び込んできたのは、血まみれで倒れてる名前の無残な姿


「名前…名前、名前…」


抱き上げて名前を呼んでも返事はない

嗚呼、俺がこの手で殺したんだ…ずっと思いを寄せてた相手を俺が殺した


「…名前…!」


二度と戻ってこねぇ名前

あの時、お前に思いを伝えてりゃあ何かが変わったのか…?

お前に伝えたかった…――――








(名前、ずっと傍に居ろよ)

(…うん!)



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茨木童子ってイケメンすぐるよね←←
酒呑童子に拾われる前のお話を書いてみたけどどうでしょうな
大分昔の話しだし言葉が合ってるのか心配だ…((汗
いと、思ひ
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