「…(ジーー」

「おい、置いてくぞ」

「あれ食べたいです」


妖怪二匹と京巡り…と言っても只街中を歩いたり神社やお寺を見回ったりしてるだけ。
巡りと言えば何か美味しいものも食べるのが当たり前じゃないですか。なのにずっと歩きっぱなし…しかも二人は大人(500歳以上のおじさん)で歩くのも早いからまだ身体が小さい私は到底遅い。合わせるのもやっとで息切れ酷いです。
そんな中目に入ったのが甘味処。外にはみたらし団子や八つ橋、おはぎ…色々なものが飾られており甘いもの好きな私にとっては食べたくてしょうがない…
それに、有紀と話してたっけ…一緒に京都行ったら甘味処制覇しようねって…


「駄目だ」(キッパリ


嗚呼忘れてた。茨木童子は鬼でしたもんね。身も心も鬼そのもので優しくなんてしてもらえる筈なかった
でも即答すぎやしませんか?ほら、私の中には羽衣狐がいるんだし少しくらい考えてくれたって良いじゃないですか…
嘘ですごめんなさい。諦めますからそんなに見下ろしながら睨まないでください怖いです


「…?どうした。入らないのか?」

「…!!」

「カス虫テメェ…!」

「聖母様が入りたいと言っているんだ。休憩しよう」

「そうです。私は聖母様です。入りましょう!」

「テメッこういう時ばっか使ってんじゃねーよ!さっきまであれ程"聖母様"とか言われるの嫌ってたくせに…!!」

「何食べよう!みたらし団子かな?八つ橋かな?それともパフェかなぁ!」

「話を聞けええええ!!」

<…女子じゃのう>


今更だけど、茨木童子もしょうけらも人間に化けてるから店員さんには普通の家族のようなものに見え「三名様ですね〜!」と普通に席に案内してくれた
茨木童子は不機嫌な顔でずっと横の壁を見ながら殺気立たせてるけど、しょうけらは私にメニューを見せて「さぁ聖母様何を頼みますか」と言ってた。しょうけらって案外良い妖怪なのかな…


「おかあさん!わたし、チョコのパフェがいい!」

「それじゃあお母さんはあんみつにしようかしら。あなたは?」

「ん?それじゃあ…おはぎにしようかな」

「おかあさん!はやく〜!」

「…お母さん…」


家族が居て良いな…私のお母さんとお父さんどうしてるのかな?私一人っ子だから二人とも私が死んで寂しい思いしてないかな…
どうせなら…家族と来たかった。旅行したかった…


「おい」

「!」

「頼まねーなら帰るぞ」

「た、頼みますっ!あ、店員さん!デラックスパフェ一つください!」

「デラックスパフェ一つですね、かしこまりました」

「てめっ一番高ぇ物を…!」

「さすが聖母様。より大きいものをそのような小さな身体で…!」

「…」


誤って大きいパフェを頼んでしまった…茨木童子が焦らせるから…!
数分後、店員さんが凄い大きいパフェを持って私の目の前に置いた。周りの席の人達はそれを見るなり「すごーい」とか「あの子が食べるの?」とか「食べれるのかしら?」とかヒソヒソと話してた
食べるしかない…ええい!苗字名前!意地をみせるんだ!これでも死ぬ前は女の子の中でも食べる方だったんだ!これぐらい!!

10分後...


「……(チーーン」

「聖母様あああ!?」

「でけぇの頼むからだ馬鹿女」

<妾の身体じゃぞ。もっと丁寧に扱わぬか…>

「で、でかすぎ……けぷっ」


10分経っても半分も食べれてない。さすが幼児体型。胃の大きさを考えるんだった…
かちゃっ
テーブルに寝そべっていた時カチャカチャと音がして上を向くと、茨木童子としょうけらが残ったパフェを食べてくれていた。
どうして…私は只の人間なのに…羽衣狐じゃないのに…


「甘ぇ。カス虫に全部やるわ」

「はひほふう。ひははほはべほ(何を言う。貴様も食べろ)」

「…どうして…」

「あ?勘違いすんなよ。これ食い終わんねーと帰れねーから食ってるだけだ」

「聖母様がもう無理なのであれば後は我々にお任せを」

「…茨木童子…しょうけら…」


有紀の話では、京妖怪は本当に悪い奴等で良い所なんてないって言ってた…でも、それは原作の戦いの時の彼らであって本当の彼らは違うんじゃないだろうか…
現にこうやって……って駄目駄目!何考えてるの!京妖怪は悪い奴等で奴良組を陥れようとして!鯉伴を殺っ……!
良い奴等なんて…あり得ない……


<……>

ガタッ

「さっさと行くぞ」

「聖母様」

「…はい」


私は出しゃばっちゃいけない…下手な事をすれば羽衣狐に殺されちゃう。それじゃ闘えない…
惑わされちゃ駄目だ!もしかしたら優しくして後で魂を食うとか!そういうのかもしれない!


<魂を食う妖怪など居らぬぞ>

「わあああ!?羽衣狐!?」

<…彼奴等の行動で戸惑っておるようじゃな?人間らしいと言えばそうかもしれぬの>

「…っ」

<……もう良い、変われ>

「え?…っ!」


無理矢理身体の主導権を羽衣狐に変えられた
私の目の前にはまた暗闇が広がり、上の方から羽衣狐の声が聞こえて来た


「…茨木童子、しょうけらよ」

「っ」

「聖母様…!」

「もう屋敷へ帰るぞ。おおよそ寺、神社の事は分かった。封印を解くにはまだ力が足りぬようじゃな」

「…どうすんだ?」

「まだ時ではない。ゆっくりと待つ事にしようかの……そのために、より良い生き肝を頼むぞ?」

「「御意」」



京巡り2



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