「お姉ちゃんと一緒に遊びましょう」

「…うん!」


なんだか他人とは思えなくてすぐに遊ぼうと誘って…私は何歳か年下の男の子と遊んだ。
凄く楽しい。色々なものを見て話したり石で地面に絵を描いたり
でも…私は何か忘れてる…何を忘れているの?


「リクオ…」


その時、大人の人の声が聞こえた
見ると……会いたかった…"お父様"…!


「その娘は…」

「お父さん!遊んでくれたの。"このお姉ちゃんが!"」

「"お父様"!」

「っ」


私のお父様…そっか。忘れていたのはこの事だったのかな
私はお父様に会えたのが凄く嬉しく嬉しくて…
でも、お父様は最初戸惑っていた。お父様…どうして私を見て驚いているの?


「ほら、お姉ちゃんこれ見て!」

「なぁに?」

「…」


きっとお父様は私の手を取ってくれる…
そう信じていっぱい笑った。きっと沢山笑えばお父様は私を見てくれる
そしたら……


「あっち行こう!」

「うん……お父様っ」

「……あぁ」


お父様が…私の手を取ってくれた…凄く嬉しかった。お父様の手は温かくて優しくて…どこか懐かしい感じがした
それからの時間は本当に幸せだった。お父様と一緒だったからもあるけど…でもなんだか別な感じもあるの
なんだろ…忘れている事はこれではなく…もっと違くて大切な事…


「あ!なんだろあれ!」

「リクオ。あまり遠くに行くなよ」


走っていくリクオと呼ばれた子
ふと、風が吹き黄色い花びらが見え振り向くと、とても奇麗な花が沢山咲いていた


「わぁ…綺麗!」


私はその花の傍に行って見ていた


"…名前"

「っ」


何か、聞き覚えのある声が聞こえた。今のは…私を呼んだの?
私はやっぱり何か忘れてる。大切な何かを…誰なの?私は…


「"七重八重――」

「!」

「花は咲けども山吹の、実のひとつだになきぞ、悲しき"」


"お願い…!言わないで…止めて…!"

身体が…勝手に…

"名前…!鯉伴様を…!"


「あの後…山吹の花言葉を何度も調べちまったっけ…"気品・崇高"」

「……」


私の頭に響く声は……

"どうか…私の代わりに鯉伴様を…!"

カチャッ――

"鯉伴様を助けて…!!"


ドクンッ


「…そして"待ちかねる"。まるで…俺達の娘みてぇだ…」

「お父さーん」

「リクオ…」

「……、め…!」


駄目……いや…お願い…


「逃げてえええええ!!!」

「、」


ズ グ !


「え…」

「ぁ…ぁああ…!」



私は…全てを思い出した。


鯉伴の娘



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