奴良組から出て行って長い月日が経っていた

そして気づけば、私は暗闇に立っていた。どこが上下左右かも分からない真っ暗な世界


「…ここ、は…?」


歩いても何も見えない。

少しして私は察した。嗚呼ここは地獄なのだと…私は二度目の死を迎えたんだ

…山吹乙女に成代って…鯉伴が生きている世界にしたいと言って頑張っていたのに…


「…結局は…駄目だった」


やっぱり子が成せないって辛いね。あのまま居たら私は迷惑をかけてしまう

山吹乙女がどうして奴良組を去ったのか、今の私なら分かるよ


「…」


私…これからどうすれば良いの?

この地獄に一生居なきゃいけないの?暗くて寒くて…寂しいよ…


「…名前」

「!」


踞って怖がっていたら、上から私の名前を呼ぶ声がした

上を向くとそこには…本物の山吹乙女が居た。私は驚きが隠せなくて只ジッと彼女を見る事しか出来なかった


「泣かないで…名前」

「…山吹…おと、め…さん?」

「えぇ」

「…ご、ごめんなさい!」

「?」


私は咄嗟に立ち上がり頭を下げて謝った

だって私が居たせいで山吹乙女の人生を奪ってしまったんだもん


「ごめんな、さいっ…私のせいで、貴女の人生をっ…!」

「どうして謝るの?…妾は怒っていませんよ」

「……え?」

「だって全ては…妾が望んだ事だから…」


え…え?ど、どういう意味?

私が…山吹乙女に成代ったのは…山吹乙女が望んだ事だったの?


「鯉伴様の死を望んでいないのは、妾も同じです…でも、妾では無理なの…だから名前に託した」

「で、でもっ私は…結局こうして…」

「名前…機会は巡ってくるものです。それに…貴女の選択肢は間違っていなかった」

「え、ど、どういう…」

「名前。もうすぐ…もうすぐです。どうか私の代わりに…鯉伴様を―――!」

「っ山吹乙女さんっ!!」


手を伸ばして遠ざかる山吹乙女さんを掴もうとしても、その手は届かず山吹乙女さんは消えてしまった

…もう一度…チャンスがあるという事?

私も…山吹乙女さんも鯉伴の死を望んでいない…山吹乙女さんに頼まれてたんだ、私…鯉伴が生きる世界へと変えてほしいと

チャンスと言えば…この後、安倍清明が山吹乙女を反魂の術で蘇らせて鯉伴を殺させる…そこで私はまた転生して…未来を変える…!


「山吹乙女さん…私、頑張るから…今度は諦めないよ。必ず貴女の頼みを果たしてみせるから」


私はひたすら走った。出口なんて分からない。でも走った

せっかく山吹乙女さんが導いてくれたんだもの。諦めちゃ駄目。

走っているとどこからか声が聞こえてきた


<<この女を反魂の術で蘇らせ、記憶をすり替えれば…後はこやつが>>

<<…そうか>>

<<頼みますぞ。清明様>>

<<我が悲願のため…>>


その時、上から白い手が見えてきた。私はそれを掴むとどんどん上へと上がっていく

私はまた山吹乙女として転生するんだ…

そこで、私の記憶は途絶えた










気がつくと私は神社の前に居た。

何していたんだろう?不思議に思いながらも私は歩いた。ふと前を見ると奇麗なお花の道の所に私よりも少し小さい男の子が立っていた


「おねえちゃん、だぁれ?」

「…あそびましょう」




託す想い



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