「山吹ー。ちょいと…」


朝、いつものように山吹の部屋へ行けば笑顔で「鯉伴様」と言ってくれると思ってた

でも…部屋へ行ってみると、そこに山吹の姿はなく…机には文と山吹の花が添えられていた

不安になりながらもその文を取って読んでみれば…



"七重八重 花は咲けども山吹の
     みのひとつだになきぞかなしき"



「…!」


俺は急いで部屋から出て真っ先に台所に居る雪麗さんの所に行った


「雪麗さん!」

「鯉伴?どうしたのよそんなに慌てて」

「今日山吹見たかい?」

「え?乙女ちゃん?…いや、まだだけど…」

「今朝部屋に行ったらどこにもいなくて…俺近くを見てくるっ」

「ちょっ鯉伴!!」


俺は急いで屋敷を出て町を見に行った

山吹…俺はお前がいなくなっちまったら…お前が全てなんだ

お前が居ない人生なんて考えられねぇ…俺はお前が帰りを待ってくれて笑顔で出迎えてくれるのが何よりの幸せなんだよ…

"お帰りなさい。あなた"


「…っ」


山吹…!





**


「…」

「あ、ぬらりひょん…」

「これがあの子の残して行った文か?」

「え、えぇ。そうみたい…中身は何なの?」

「"七重八重、花は咲けども山吹の、みのひとつだになきぞかなしき"」

「!…乙女ちゃん…もしかして」

「あの子は…自分に子が成せなくて責任を感じたんじゃな」

「そんな…」

「…」

「ぬらりひょん?」

(あの時狐に呪いをかけられた…だがワシは桜姫と一緒になって鯉伴を……!)


ぬらりひょんは、はっとした。狐…羽衣狐の言った意味がようやく分かったのだ


「そういう事か…」

「え?何が」

「狐の呪いじゃよ…ワシは普通に桜姫と、"人と交わったから"分からんかったが…もしや狐の呪いで、妖と妖は交えない…」

「!じゃあ乙女ちゃんが責任を感じる事じゃないじゃない!私も探してくる!」

「雪麗!」

「何よっ…」

「…」

「…そんな…」


行ってももう遅い事はぬらりひょんは分かっていた

どんなに探しても、山吹乙女はどこにも居ない。この近くにはもう…

ぬらりひょんは後悔した。自分のせいで山吹を追いつめてしまった事を

自分が狐の呪いを受けたせいで、二人を離れさせてしまった

















ザァアアアアアッ


「…」

「鯉伴様…」


どんなに探しても山吹はどこにも居ない

俺が気づいていれば…山吹が苦しんでいる事にもっと早く気づいていれば…

山吹…


「屋敷に戻りましょう。皆心配しています」

「…なぁ首無」

「?」

「俺…山吹に何してあげられたかい?」

「え?」

「俺は山吹から色んなものを沢山貰った…でも俺は山吹に何もしてあげれなかった…」

「鯉伴…」


山吹が居て当たり前

そんな事を思っていたのに…俺は山吹を分かってやれなかった

山吹はずっと悩んでいたに違いない筈なのに…子が成せねぇ苦しみは女が一番分かっているってのに…









「俺は…最低な男だ…」



文と山吹の花
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久しぶりに更新…
最低なのは私だ。



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