次の日の朝日が昇る時

私は眠れなくてずっと起きて鯉伴の帰りを待った

きっと雪麗さんや狒々さんも一つ目さんも他の妖達もみんなが心配で眠れなかったと思う


ウロウロウロ

「もう朝日が…さしたようですね」

「!」

「深川の方で何かあったんでしょうか…火の粉が此方まで…」

「乙女ちゃん!アンタは出ちゃ駄目よ!分った!?」

「え、あ」

「う〜あの子何やってんのかしら〜一つ目〜狒々〜あの子の様子見てきてよ〜」

「えぇぇ」


雪麗さんが狒々さんと一つ目さんにボソッと何か言った

多分鯉伴の様子、見てきてと言ったんでしょうね…

きっと大丈夫…もうすぐ帰ってくる…


「おいおい…今日出入りとは聞いてねぇぜ」

「まぁまぁ若いもんに任せようではないか」

「でもズルくね?初代はチャッカリ行ってんだぜ…ん?」

ワイワイ

「総大しょ……ゲッ!」

ドンッ!

「鯉伴!!」


鯉伴…!

嬉しさが込み上げて走って門の外へ出ると…鯉伴が…


「あなた…お帰りなさい」
「あぁ。ただいま」


ボロボロになっても鯉伴は笑って帰ってきてくれた

出そうになる涙を抑えるので精一杯だったけどでも我慢できずに、私は鯉伴に抱きついた


ヒシッ

「!」

「心配したんですから…ずっと、待ってたんですから!」


周りから「おぉー」と歓声が上がったけどそんなの気にしない

私はずっと鯉伴から離れないから


「ヒューヒューだね!二代目ー」

「古っ」

「熱々だな」

「だなっ」




















「鯉伴様、お怪我の方はもう大丈夫なんですか?」

「あぁ、もう大丈夫だ。ほらこの通り」


あの日から数日が経った

鯉伴は怪我もすっかり良くなって変わらない笑顔で接してくれる


「街の復興は進んでいますね」

「あぁ。結構派手にやっちまったけど人間って凄ぇな。もう元通りになろうとしてる」

「えぇ…」


また変わらぬ平和な時が流れていく

10年、20年、50年…その先も…私はこの組に居られるのだろうか。子も出来ぬ私が………その時何か膝に重みがかかったかと思えば


「え、鯉伴…様?」

「ちょっくら一休み」


こ、これは世に言う…膝枕!

恥ずかしい…下を向けば鯉伴の顔が…膝枕ってこんなにドキドキするもんなんだろうか。相手が好きな人だから?

ああああ…こんなにドキドキするの生まれて初めて…!


「…――恥ずかしいのかい?」

「えっ!?」

「ぷっ…顔真っ赤」

「あ、あの!いやその…!」

「本当、山吹は可愛いな」

「、」


鯉伴…その笑みは不意打ちです。

私はどんどん貴方に惹かれてゆく…でも惹かれてゆく度に悲しくなる。貴方と離れてしまう日が来る事に


「鯉伴様…?寝てしまったんですか?」

「…」

「…もう」


私は鯉伴の髪を撫でながら空を見上げた

なんて青くて綺麗な空なんだろうか。現代ではあんな空見られなかった…それ程今の時代は綺麗なんだと伺える

こんなに美しい時代が…あんなに汚れてしまうなんて…時代の流れは怖い。このまま時が止まってしまえば良いのに…

そうすれば、鯉伴ともずっと居られて楽しい時が過ごせる。でも…それじゃあ駄目だよね。だってそれじゃあリクオが生まれないもん。私が居ちゃ駄目なんだよやっぱり


「っ…やばいっ」


泣いちゃ駄目。鯉伴にバレないようにしなくちゃっ

着物の袖で涙を拭いても零れそうになる涙。未来なんか今は気にしちゃ駄目。大切なのは今なんだから

今を…この時を楽しもう。楽しんで楽しんで…思い残す事のないくらい笑おう

スゥッ


「!」

「…山吹をそんなに悲しませる原因はなんだい?」

「あな、た」


いつの間にか鯉伴は起きていたみたいで、私の頬にそっと手を添えてくれた

鯉伴に心配かけさせたくないのに…私は、


「ごめ、なさい…ごめんなさいっ」

「どうしたんだい?なんか辛ぇ事があんなら抱え込まずに相談しろ、な?」

「鯉伴様…私はっずっと、鯉伴様の妻で居てっ良いですか?」

「何言ってんだい。当たり前ぇだろ?お前は俺の妻だ…あの時約束しただろ」

「…っ」

「俺達の子がこの奴良組を継ぐんだ…だから、一生ついてこいって…山吹。俺達はずっと一緒だ」


そう言って抱きしめてくれる鯉伴の温もりが伝わってきた

嗚呼…"山吹乙女"はこんなにも愛されてるんだ。

ごめんなさい。山吹乙女さん…貴方の変わりに私がこんな良い思いをしてしまって…

でも、もう遅い。私は既に鯉伴を愛してしまったから…このままずっと傍に居たい。原作なんて…関係、ない

鯉伴さえ生きていてくれたら…私は――――


「お帰りなさい」



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