「よい、しょっ…と」


まだ霧が晴れないくらいの早朝の事

鯉伴はまだ帰ってきてはいないけど…今頃山ン本五郎…長いかな。山ン本さんと闘っている頃かな…

只待ってるだけなんて私には無理だから、掃除洗濯…寺子屋の仕事もして普通に…いつも通りに帰りを待とう


「あら、おはよう。いつも早いわねぇ乙女ちゃん」

「おはようございます、雪麗さん。ちょっと寺子屋の仕事も溜まっているもので」

「そんなの部下に任せておけば良いのに」

「いえ。私がしたくてしていますので」

「…」


少し高い干し竿にも軽く届く…前より身長伸びたなぁ私…

あ、いや私じゃなくて元々山吹乙女が高かっただけか


「どうしてぬらりひょんの嫁ってのはこういう子ばっかなんだろ!」

ヒョイッ

「え!雪麗さん?」

「私なら権力の座に胡坐かいてるだろうにさ」

「…ふふっ」

「!そこ笑うところ!?」

「ご、ごめんなさい」


漫画とつい同じで笑っちゃった

驚いた雪麗さんはすぐに微笑んだかと思えばため息つきながら洗濯物を広げ


「まったく鯉伴ったら、乙女ちゃんに心配かけてさ」

「…」

「あんたも大変ね。いっつも夫がほっつき歩いて…よく愛想がつきないよ」

「…はい」

ズルッ

「はいって…」


確かにいつ愛想が尽きても可笑しくないと思う

でも、私は決めたから…あの人の妻である限り、私は鯉伴を待ち続けると


「私は、待つだけですから」

「…」

「あの人はきっと…この街のために働いているんだと思います。だからその目的を果たした時に家で待っていてあげたい…お帰りなさいと言ってあげたい…それが私の役目ですから」

(えーーい!もう、なんなのよ…わかったわかった。幸せになるが良いさ!)


きっと鯉伴なら大丈夫

原作では黒田坊も一緒になって……あ


「きっと<<黒田坊>>が居てくれたら、すぐに世の中変えてくれるかな」

「黒?…何それ」

「子供達が話していたんです。正義の妖怪なんですって」


黒田坊にはとても温かく深い意味がこもっていた。子供たちの話も聞いて改めてそう感じた

子供たちの思いで創造された黒田坊。だからあんなに優しい人なんだね


「元々は戦や飢饉で孤児になった子供達が創り出した妖なんです。野盗や…野武士や…度重なる悲劇から救われたい一心で生み出されたらしいんです」

「へぇ…」

"助けて…助けて…黒田坊…"

"いつか来てくれるんだ…漆黒のお坊さんがボク等を助けに"

"そのお坊さんは強くって…背が高くって…無限に武器を持ってて、どんな悪い奴でも倒しちゃうんだ"

「…さすが子供たちが考える設定ね。無茶な設定…」

「子供たちの希望として密かに伝わっていったそうです…私も信じてます」

「え?」

「黒田坊…きっと来てくれます。助けに」


だって黒田坊が居てくれたお陰で、この街は救われるんだもの。鯉伴と一緒に闘って…

子供たちもきっと喜んでくれる。

だからお願い。早く…早く目を覚まして…黒田坊…―――






















「たすけて、くろたぼーーー!!!」

ザァッ

「お前達…拙僧から離れるな…!守ってやるからな」
子供たちの思いによって生まれた妖なのだから…――


ただ、帰りを待つだけ



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