それはある寺子屋で子供達のお勉強を教え終わり花に水をまいている時でした


「本当だよ!!」

「ウソだ」

「目撃者は多数居るんだよ!?」

「お前等ー清衛門くんの言う事を信じられないのかよ〜!?」

「えー!?」

「むぅ」

「ね!先生!山吹先生どう思う!?」

「ん?」


ちびっ子清十字団の子達に呼ばれて振り向いた

…まさかとは思うけど…


「…なぁに?そのお話」

「妖ですよ妖!!その百足にかまれるとたちまち死んでしまうんですよ!!」

「あ、妖…?」


やっぱり…でも、清つぐ…じゃなくて清衛門君の言葉を無視できない

等々来てしまったのだから…今後起こる展開も全て分っているのだから


「毒をとるには犬の小水が効くらしいですよ!!」

「えーバッチィ」

「おかげで犬が虐待されて生類憐みの令が出されたとか…」

「清衛門くん!?」

「なんか急にうさんくさくなった」


…そういう理由だったっけ?

とりあえず子供達は早く帰らせた方が良いかも…妖にあわせちゃ駄目


「遅くなってしまうからもう帰りましょう」

『はーい』

「他の子たちが怖がるからあんまり話しちゃダメよ」

「はーい先生」

「じゃまた明日ねー」


良かった…素直な子達で……それにしても


「ふふ…可愛いなぁ」

「山吹乙女様…おつとめごくろーさんです」

「!?く、首無!?」


急に後ろにいたから驚いて後ずさりをしてしまった

しかも町中で生首を浮かして…もう…!


「びっくりした…もう、急に生首で出てこないで下さい!」

「な…生首…」

「子供たちが見たら驚くからちゃんとおさめて下さい!」

「はぁ……時に鯉伴様は来られませんでしたか!?」


鯉伴…?

そう言えば見てないなぁ…この間はあんなに良い雰囲気だったのに…またすぐフラフラと


「鯉伴?…どうして?」

「最近見ました?あの人」

「いいえ…でもいつもそうですから…だって"ぬらりひょんの子"ですもの!もう諦めています」


そうだよ…ぬらりひょんの子だから仕方ないよね

追いかけるのも山吹乙女としてどうだろう、だし…やたら文句言っても逆効果。だったら諦めて屋敷で帰ってくるのを待つのが妻の役目だと思うから


「まったくあの人はこのご時世のときまで…変な妖はウロウロしてるってのに…」

「…」

「どうしました?山吹乙女様」


私は…なんて事を

今思えば清衛門君や彼等は…現代の清十字団の先祖じゃない…!

なら、必ず妖が出たという噂の場所に行く筈なのに!どうして止めなかったの!


ダッ

「山吹乙女様!?」

「ご、ごめんなさい!き、急用が!首無!鯉伴様見つかると良いですねー!」

「…え…あ、お待ちください!」


早く行かなきゃ…!

少しでも早く追いついて止めさせなきゃ…!少しでも変わってくれれば!




「みんなー!」

「あ、先生ー!」

「はぁ…あれ?清衛門君は?」

「妖見つけるって草むらに入っちゃったの!」

「え!?清衛門君!」

「?…何、これ」


かすかに百足が清衛門君のところに向かっているのが見えた。噛まれたら大変!

私は急いで駆け下り清衛門君のところまで走った


「あっ」

「危ない!!」

ザバァァッ

ドサッ


ぎりぎり清衛門君を助けられた

その時、ズキリと足首の方に痛みを感じた…嗚呼どんなに頑張っても原作のようになってしまうの…?


「いたた…」

「先生!」

「山吹乙女様!」

バッ

「!?」

シャアァァ


…こ、これが…山ン本五郎佐衛門の生み出した妖なの…?

生で見ると凄く恐ろしい…やっぱり妖は怖い。でも、今はこの子を守らなきゃ…!

向かってくる百足に私は清衛門くんを後ろに抱きしめると


ズシャアアアアアッ

「!」

「まん?…ばっ…」

「てめぇは誰の女に手ェ出してると思ってんだ?」

ドドサッ

「…り…鯉伴、様…」

「よぉ山吹。息災かい?」

「鯉伴様!一体今までどこへ」

「おー首無」


鯉伴の顔を見たらホッとした

良かった…本当に、良かった


「先生〜!」

「みんな…無事で良かった」

「先生…ご、ごめんなさい」

「もう良いから、今後は危ない場所へは行っちゃダメよ」

「…はいっ」

「二人も、分った?」

「「はーい」」

「それじゃもうお家に帰りましょう。暗くなったら危ないから」


子供達は「先生ーばいばーい」と行って帰ってくれた

…私に何が出来るのか改めて考えさせられた。所詮私は何も力もない只の14歳だった子供

そんな私がいきなり山吹乙女に成代わっても何も出来ない…


「山吹」

「!」

「屋敷に帰るか」

「…ぁ、はい」


鯉伴が居れば山ン本五郎佐衛門は倒される

でも、被害は大きい…私が何とかして被害を抑えられれば…

グラッ

…あれ…視界が、歪んで……嗚呼、百足の毒、が…まわっ、て…

ドサッ


「!山吹!」

「山吹乙女様!」


だんだん鯉伴と首無の声が遠のいていく







「やっぱムカデの毒にやられたか…」

「毒!?」

「そこまで気丈にしていらしたのですが倒れられて…」

「、」


スゥ

なんだろうか…さっきまで苦しかった息が急に楽に…

(まー母親の血ちゃっかり継いでるし…)

「雪麗さん。ちょいとこいつたのむや」

「え!?え、えぇ」



「まったく…鯉伴はいつも急なんだから…」

「…すぅ…すぅ…」

「でも…良かった。乙女ちゃんが無事で」

「雪麗さん、乙女様のご容態は?」

「あー大丈夫よ。もう毒も抜けて静かに眠ってる」

「はぁー良かったー」

「苦しそうなときはどうなるかと思ったー」

「よかったよかったー」

(…小妖怪にも人気なんだから、乙女ちゃんは)


ある怪異



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