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「っ…!」
"――何故だ…お前は何をしている…?"
夜、頭痛で目が覚めた時頭の中で声が響いた
嗚呼…"お前"…等々出てきたんだな…
「…何の、話だ」
"――とぼけるな…天女様の事だ"
「伊織の事は」
"――やっとまた傍に居られるのに…何故こんな所に留まっているんだ"
「伊織の望みは俺の望みだ…だから俺はこうしてっ」
"――…そして結局は天女様は他の奴に取られてしまう"
「!!」
"――何度もそうだった…近くに居たのに話す事も出来ず、只天女様が他の奴に取られるのをジッと見ている事しか出来なかった"
黙れ…それが伊織の望みなら…俺は何も言わない
お前とは違うんだ…!
「っ!」
部屋に居てはまずいと思い、何とか歩いて外のベンチまでやってきた
足がぐらつき、地面に膝をついて肩で呼吸をする。止めてくれ…でないでくれ…やっと手に入れた幸せなんだ
何十回も同じ過ちを繰り返し殺処理されてきた…だが今回は…違うんだ…!
コンコンッーー
「っ」
いつの間にか自分の部屋に居て朝が来ていた
ドアのノックで目覚めて、ゆっくり起き上がってドアを開いた。そこにいたのは…
「…白鬼院さん」
「なんだ、起きていたのか」
「何の用、で」
「何の用って…今何時だと思っているんだ?」
白鬼院さんの言葉にキョトンとした俺は部屋にある時計を見ると…
9時………え?
「全く…いつも早い"君たち"が遅いからどうしたかと思えば寝坊か?良い迷惑だ」
「心配して来てくれたんですか?」
「っち、違う!みんなが心配だと言うのでジャンケンで誰が行くか決めたのだが偶然僕に決まってしまっただけだ」
「はぁ……伊織は」
「、そうだ。彼女も来ていないんだ。今から部屋に行くが…まぁ君の主人だからな、彼女の事は狂宴寺くんに任せる」
「えぇ」
俺は急いで着替えて部屋を出て伊織の部屋へ行くと
「あぁ狂宴寺さん。おはようございます」
「「御神狐くん/さん!?」」
思わず白鬼院さんと声がハモってしまった
な、何故御神狐さんが伊織の…!
「琥珀さん。おはようございます」
「お、はよう。伊織」
「何故御神狐くんが」
「凛々蝶様が狂宴寺さんを起こしに行くと聞きまして…僕も付いてきたんですが天宮さんとお会いして何やら深刻な表情をしていらしたのでご相談に乗っていたんです」
「何かあったのか?伊織」
「それが…琥珀さん、これ貴方の字、よね?」
「え」
そう言われ伊織から渡された紙には………
"やっと、貴方の傍に居られる"
正直ゾッとしてしまった。確かにこれは俺の字…だとしたら妖怪の俺が書いた…?
「琥珀さん…?」
「狂宴寺さん、大丈夫ですか?顔色が」
「い、いえ…ごめん、伊織。俺の字に似てるけど、俺は書いてないよ」
「そう」
「じゃあ誰なんだ?」
「天宮さん、心当たりは」
「いいえ…琥珀さん、ごめんなさい」
「いや…気にしない方が良いと思うよ」
俺はこのままここに居て良いのだろうか
このままじゃ…妖怪の俺が完全に出てきてしまう…それじゃあ伊織やみんなに迷惑がかかる
だとしても、殺処理を自ら名乗り出れば伊織は悲しむ…
俺は…どうしたら良いんだ…
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