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「おい。その黒い奴誰だよ」
「ちよちゃん…」
「ちょっと反ノ塚、どういう事。これ」
「俺にもさっぱり」
「さて。こうしてみんな居る事だ…説明してもらおうか。君の正体とそこの彼の事も」
狂宴寺君は未だ目を逸らしている。
聞かれたくなかったのかもしれない。だが彼は謎が多い。謎が多い彼とこのまま一緒に住み続けて安心出来るのか…それを考えてしまうんだ。
一緒に住む者を疑うのは僕だって嫌だ…しかし、彼のあの変わり様がどうしても気になる
「おい、そういやぁ残夏と天宮居なくね?」
「あら本当。どこ行ったのかしら…ハッ!?まさか伊織ちゃんを独り占めにしてふしだらな行為を…!//」
「ないない」
「良かったねー琥珀ちゃん。天女様居ないって。聞かれなくて済むねー」
「…えぇ………まず、彼についてお話します。彼は"死神"の先祖返りで少し特殊な仕事を任されています」
「え、死神…!?」
「そんな奴も居るんだな…」
「それで?特殊な仕事とは?」
「…規則を破り一般人にとって危ないと適応された先祖返りの処分、"殺処理"…」
『っ!』
「いやー。結構沢山居て繁盛してまーす。あ、皆さんは俺にお世話になるような事はしちゃ駄目だよー」
誰もが唖然としてしまった
中には、確かに危険な妖怪の先祖返りが居るとは聞いていた。だが…"殺処理"を仕事とする先祖返りが居るなんて初めて聞いた。正直フードで顔が良く見えないが口元を上げる彼の表情には背筋が凍った。
「…そして…私は、狂骨の先祖返りです」
「狂、骨…?」
「はい。元々私はSSなど出来なかったのですが指紋様に無理にお願いをしてSSをさせていただいています」
「なんで出来ねぇんだよ」
「それはー狂骨っていう妖怪が怒り、憎しみ、妬みなどと言った感情で生まれた妖怪だからでーす」
「…」
「もし琥珀ちゃんがそういった感情を沢山受けてしまうと妖怪になんと!……身体を乗っ取られるかもしれないからでーす。そうなれば俺は嫌でも琥珀ちゃんを殺処理しなければならないのでーす。ほら、一般人に危害が及んだら危ないでしょ?だからSSなんて出来ないんだよ。人と関わるという事はイコールそういう事だから」
天間零だけ可笑しく言って僕たちは言葉が出なかった。何もかもが初めてな事で…どう言葉をかけてやれば良いのか分からなかった
彼はずっと殺処理される恐怖の元で生きてきたというわけか?目の前に殺すかもしれない奴が居るのに何故普通に話していられるんだ
「一つ聞いても良い?」
「なんですか?雪小路さん」
「…本来SSが出来ない狂宴寺がなんで伊織ちゃんのSSをしているのよ」
「それが伊織が家から出られる条件だったんです」
「では…天宮さんがこうしてここに居られるのも…」
「はい。私がSSをしているから…もし私が死んだり、SSを拒んだ時…伊織はまた監禁に逆戻りです」
「…そんな」
「…伊織ちゃんはキョウの事知ってんのか?今俺等に話した事」
「多分、知らないと思います。そして…貴方方にも本当は知られず過ごして活きたかったのですが……もう…」
「っ」
僕の、せいだ…僕があの時狂宴寺君の電話を盗み聞きしなければ…こうして無理に問いかけなければ…!
どう詫びれば良いのだろうか…僕は…!
「…お、おい!なんでこんな暗い空気になってんだよ!」
「渡狸…?」
「え?」
「狂宴寺の事知って何が起こんだよ!自分の事話したってだけで別に暗くなる必要ねぇじゃねぇか!」
「…渡狸君」
「そうよね。話したからSS辞めるって訳じゃないでしょ?私が興味あるのは初めから伊織ちゃんだけだし〜///」
「ハッ!俺は不良だからな!別に気にしねぇだけだ!」
「…渡狸さん…雪小路さん」
「私も、気にしないよ…?狂宴寺の事…知れたからむしろ嬉しい…」
「髏々宮さん」
「俺も。要はさ、一般人に危害を加えなければ良いだけだろ?怒りとかは完全には無理だろうけど受けさせなければ良いだけだし。そんな落ち込むなよ、キョウ」
「反ノ塚さん」
「ぼくもです。只ぼく達は狂宴寺さんの事を知りたかっただけですし…ね、凛々蝶様」
御狐神君の言葉で全員僕の方を見た
き、急に見られると!き、緊張…して!
「ふ、ふんっまぁそういう事だ。別に君に出て行けと言っていたつもりではないしな」
「…白鬼院さん」
「素直じゃねぇな」
「あのー俺の事忘れてませんー?」
『あ』
すっかり忘れてた。思い出せば天間零はいきなり泣きべそをかいて正直煩い奴だと印象づいた
しかし、只者ではない事も分った。殺処理を仕事とする奴に只者ではない奴など居ないことは知っていたが…
後は…天宮さんにこの事を内緒にするかどうかだ。僕達はその後考え狂宴寺君から「知らせないでやってほしい」との意見だったので言わない事にした
良かった…天宮さんにはまだ話していなかったんだ。安心した
…そうだ。今晩狂宴寺君に謝罪文を書かなければ…元はと言えば僕のせいでこうなってしまったからな。よし…あ、何か手紙と一緒に添えた方が良いだろうか?
「今朝白鬼院さんから手紙とお詫びの品として栞を頂いたのですが…しかも手紙の内容が3枚みっちりと」
「凛々蝶、あれでも申し訳ないと思ってたんだろうな。律儀だろ?あいつ」
「…えぇ。別に気にしていないのに」
「ねぇねぇ!昨日みんなで何の話してたのー?」
「夏目さん…知ってるくせに」
「えー?」
「業とらしい」
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