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「狂宴寺さん。此方にいらしたんですか」
「?…私に用ですか?御狐神さん」
「今日は天宮さんとは一緒ではないんですね」
「伊織は近くのスーパーに買い物へ…一緒に行こうかと尋ねましたが断られましたので」
庭のベンチで伊織のドリルの採点をしているとき、御狐神がやってきた
珍しいな…白鬼院さんの所にいないなんて
「良かった…実は貴方にお聞きしたい事がありまして」
「なんですか」
「…昨晩、誰と電話なさっていたんですか?」
ピクッ
ペンを持つ手が一瞬震えた。何故…御狐神がその事を…
「凛々蝶様からお聞きして…しかも狂宴寺さんがいつもと違う感じがしたのでどうしたのかと思いまして」
「……申し訳ありませんが、私は昨夜は誰にも電話はしていません」
「…」
「白鬼院さんの見間違いでは?」
「ぼくは凛々蝶様のお言葉を信じています。それに凛々蝶様の視力や聴力は正確でございますし間違える筈ありません」
…まさかあいつとの話を聞かれていたなんて…
やっぱりあの時感じた人の気配はそうだったのか。しくじったな…
「仮に…」
「、」
「それが事実だとして、どうなるんですか?」
「それはどういう意味で?」
「貴方方に何か利益があるのか…という意味です」
「…それ程聞かれてはまずい事を聞かれてしまったんでしょうか」
「さぁ…」
御狐神は厄介だ。気持ちが読めない
どう逃げれば良いのか…狐は本当に厄介だ
「お、あそこに居んのミケとキョウじゃん」
「っ」
「なんか只寄らぬ雰囲気だなぁ…なんかあったのか?」
「…!」
バァァッ!
その時そこにいた誰もが驚いた
高い塀の筈なのに、黒いフード、服に身を纏った男が塀を飛び越えてきて、ストンッと地面に着地した
……あいつ…
「なっ…誰だ!」
「凛々蝶様!」
「やーどーもどーも…黒い郵便屋でーす。手紙持ってきました」
「ほんと黒いな」
「どーも。先祖返りの皆さん。俺は天間零(テンマレイ)と申します。はい」
「零…!ここには来ない約束だった筈だ…何しにっ」
「やだねー。手紙持ってきたっつったじゃん。怒っちゃだーめ」
「っ」
「狂宴寺君…どういう事か説明してもらえるだろうか?もしや君はこんな状況でも誤魔化すんじゃないだろうな」
「え、何。何の話?」
零が来た事で逃げ場は無くなった
ちらりと零を見れば、フードのせいで顔が良く見えないが確かに口元が上がったのが見えた。こいつ…狙って来たな
「……分りました。お話します」
「そうか…ではラウンジに行こう」
「ちょっミケ。どういう事?」
「お兄様。全てはラウンジで分りますので」
「あー、そう…?」
全て終わりだ…ここの人達には伊織には聞かれたくなかった
電話は自分の部屋でしなくちゃいけないのが今回身をもって知らされたな
ごめん…
「、あら。夏目さん」
「やっほー☆伊織たん。買い物に行ってたのー?」
「えぇ。紅茶の葉が切れかけてたから」
「そっか」
「夏目さんそんな所で何してるの?ラウンジには入りましょう」
ガシッ
「っ」
「伊織たん…ちょっとさ、ボクと庭の方でお話しない?」
「え?…え、ぇ。良いわよ」
「よーし♪それじゃあ伊織たんだ・け・に!残夏お兄さんの秘密教えちゃおー!」
「秘密って何?」
「んふふふ〜。さーて。どんな秘密かな〜?」
「もう、夏目さんはー」
(…今ラウンジで話される会話は伊織たんにとっては酷だし…それに死神と天女を引き合わせるのもいけない…はくたん。心配せずとも伊織たんだけには聞かれないようにしてあげるから)
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続きます。
・オリキャラ
天間 零
死神の先祖返り。
黒いフードや服を身に纏っているので殆ど素顔を知る者は居ない。
狂宴寺琥珀との関係は次の話で。
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