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それは、ある日の夜の事

僕は寝付けなくて気を紛らわすために自動販売機で飲み物を買おうとした時だ

行ってみると僕よりも先に誰かがいた。良く見ると狂宴寺君だと言う事が分かる。誰かに電話でもしているのだろうか?


「…――結構日にちが経っているんだが、何してるんだ。お前は」

「っ」


初めてだ。彼の…あんな喋り方を聞いたのは

普段僕達の前では御狐神君みたいに敬語だし…天宮さんの前ではタメ口だがあんな雑な言葉遣いはしない

…って僕のこの行為は盗み聞きではないのか?


「"ごめんよー琥珀ちゃん。何分俺字、書くの下手でさぁ…後3日頂戴な"」

「お前は…ちゃんと練習しとけって言っただろ」

「"こっちにだって仕事あんだからさー。そこんところ理解して"」

「…今月は"何人殺したんだ"」

「!」


バッ

今…彼は何を言った…?"何人殺したんだ"?

電話の相手はそんなにヤバイ奴だというのか?同じ先祖返りだとしても聞き捨てならない言葉だ…電話の相手も先祖返りとして誰を…?

もし一般人なら…――


「…」

「"どうしたんだい?"」

「いや…なんでもない」

「"それで?君は大丈夫な訳?"」

「何が?」

「"怒りや憎しみと言った感情、受けてないよね?"」

「…」

「"駄目だよー。君はそういう感情で出来た妖怪の先祖返り…下手すれば妖怪に乗っ取られちゃう…かも"」

「その時は…お前が止めてくれるんだろ?いつだってそうだった。俺が妖怪になればお前が止めた」

「"馬鹿だねー。今回は乗っ取られちゃ駄目っしょ?天女様に嫌われちゃうぞ。ひゃははっ"」

「…それは困るな」


僕はばれないように自室へ戻った

明日…先程の事を狂宴寺君に聞くべきだろうか…いや、まずは相談すべきか?…誰に相談すれば良いんだ…












「凛々蝶様…!そのクマは如何なされて…!嗚呼凛々蝶様の愛らしい目が」

「御狐神君。相談があるんだが…も、もしっ暇なら聞いてくれるだろうか?」

「凛々蝶様からご相談いただけるなんて…どうぞなんなりとご相談ください」


やはりまずは御狐神君に相談する事にした。

彼なら真面目に正確に考え対処してくれるだろう…僕は昨晩あった事をそのまま話した


「狂宴寺さん、がですか」

「あぁ。あんな彼は初めて見た。どんな相手にも敬語で話していた彼が電話の相手には雑な言葉遣い」

「ご家族の方とかではないのですか?」

「だとしても…殺しが関わる話は普通はしないと思うが?」

「…ならば…先祖返り同士の会話。それも普通の仲ではない何か」

「っ」


考えている内に分ったことがあった

僕たちは狂宴寺君の事を何も知らない。何の先祖返りでどこで生まれどう育ってきて…どういう人なのかすら…

一緒に住んでいれば多かれ少なかれ誰がどんな先祖返りかは分る…現に天宮さんは話してくれた。

だが彼は何一つとして話してはくれない


「そんなに気になるのでしたら、ぼくから狂宴寺さんに聞いてきましょうか?」

「えっ」

「ここはSS同士の方が良いと思いますし」

「で、でもっ…」

「?」

「もし…御狐神くんに何か…あったら…その」

「凛々蝶様。狂宴寺さんは同じマンションに住む住人でございます。危険はありません」


だが…いつかの時、君と奴(蜻蛉の事)が闘りあってるのを見た気がする…

僕はそうなってほしくない。只、それだけだ


「天宮さんはこの事を知っていられるんですか?」

「え、あ…いや…もしかしたら知らないかもしれない。彼女には僕から話しておく」

「はい」


僕は別に狂宴寺君が悪い奴ではないかと疑っているわけではない。

只……―――


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オリキャラ登場。
続きます。

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