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「?珍しいな。夏目君は一緒ではないのか?」

「あ?あー…残夏の奴変なんだよ」

「変?」

「アイツ、夢でなんか見たのか泣いててさ…休んでろって言った」

「…渡狸、優しい…」

「バッ!俺はべ、別に!!只そんな感じで傍に居られてもこっちが困るだけだ!か、勘違いすんな!」


夏目さんが…大丈夫かな

夏目さんはいつも私を励まして笑わせてくれた。私に出来る事ないかしら…


「私、少し様子を見に行ってくるわね」

「あ、あぁ。悪ぃな」

「いいえ。渡狸君達には学校があるでしょ?夏目さんは私が見ておくから安心して」

「天宮さん…お言葉に甘えさせていただきますね」

「反ノ塚送ったらすぐ戻ってくるわね!」

「野ばらちゃん、おさっ押さないで」


慌ただしい朝が過ぎた。

静かになったラウンジを出て私は夏目さんの部屋へ向かった


コンッ コンッ

「…」


まだ、寝てるのかしら…だとしたらお邪魔だったわよね

ここは時間を改めて、と思って戻ろうとしたらガチャッと扉が開く音がして振り向くと夏目さんが出てきてくれた


「伊織たん…」

「夏目さん。大丈夫?渡狸君から聞いて心配で」

「…」

「夏目さん?」

「ぼくは全然平気だから"伊織たんは、はくたんの所に戻りなよ"」

「っ」


どうして…琥珀さんが出てくるの?

今日は琥珀さん詩紋様の所に定期的に行かなくちゃいけないから今は居ないのに…夏目さん…


「私が、夏目さんの傍に居ては駄目かしら?」

「っ…そんな事っ只」

「それじゃあ夏目さんの傍に居させてくれませんか?夏目さんが具合悪そうなのに私だけのんびりとなんか入れないわ」

「伊織たん…」

「何か、悩みがあるのなら私で良ければ相談にのるし…何か私に出来る事ないかしら?」


いつも笑顔の夏目さんには似合わない無表情…そんな彼を見ているだけで心が苦しい

少し間があき、夏目さんは口を開いて


「じゃあ…ぼくの傍に居てくれないかな?」

「えぇ」


部屋に戻るのかと思ったら夏目さんは屋上に行きたいとの事だから私達は屋上へ行った

エレベーターから出ると心地いい風が私達の身体をすき抜ける

私達は歩いて椅子に座った


「渡狸君から聞いた…悲しい夢を見たの?」

「…はくたんの夢を、ね」

「琥珀さんの…?」

「ぼく百目の先祖反りでしょ?だから夢ではくたんの過去…前世、つまりはくたんが妖怪になる前からの記憶が視えちゃったんだ」

「…」

「凄く…悲しくて残酷な夢、だった…」


それから夏目さんは琥珀さんの夢を話してくれた。

本当に悲しくて残酷だった。琥珀さんは人だったのに愛する人に裏切られて殺されて…その怨念が彼を妖怪に…

確かに琥珀さんとの話で言ってた…「私は誰も愛せない…愛せばその人を傷つけてしまうから」…それはこういう意味だったのね…


「そう、だったの…」

「そしたら自然と涙が出ちゃって…こんなの、同情にしかならないのに…駄目だよねーぼく」

「…」

「……なんか伊織たんに話したらすっきりしちゃったー☆」

「…夏目さん」

「ほら、もうぼく元通りだしー伊織たん心配そうな顔しないでよ〜」

「…もう」


急に夏目さんがいつも通りに戻った

やっぱり夏目さんはその方が夏目さんらしくて私は好きです。


「あ、伊織ちゃ〜ん!///」

「野ばらさん、御神狐さん」

「夏目さん。お体は大丈夫なのですか?」

「そーたん…ぼくの事心配してくれたんだね…!ぼく幸せ!」

「私は伊織ちゃんの心配だけどね」

「…わーお…」


夏目さんを見ていたら自然と笑みがこぼれました


















「……っ」


マンションに帰る途中、琥珀は咄嗟の頭痛に立ち止まり頭を抑えた

数分して痛みが治まりゆっくり顔をあげると…


「やほ〜。琥珀ちゃ〜ん」

「!…零…急に現れるなといつも言ってるだろ」

「ごめんごめん…頭痛治った?」

「あ、あぁ」

「…気をつけなよ」

「?」

「"妖怪のキミ"が外に出たがっている」

「…あぁ」


終わりの時が既に回り始めている事を

今は誰も知らない―――

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