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ドーーンッ!
「…なんだ。この山は?」
「伊織ちゃんのお見合い写真の束だとよ」
「お見合い!?」
「毎回断っているのだけど…こうしてくるのよね」
「なんだよお前の家は」
止めて欲しい。私は私が決めた方と人生を共にしたいのに…
見ず知らずの方と一緒にはなれない…
「本っ当どいつもこいつも自分の顔鏡で見た事ないのかしら?大体こんな男が伊織ちゃんに似合う筈ないじゃない」
「何故雪小路さんが真剣に見てるんですか」
「伊織ちゃんの変わりに私が見極めてあげてるのよ。でもこの様子じゃ全員ボツ!ね」
「まぁそうなんですか。良かったです」
「随分嬉しそうだな」
「ちよちゃん…」
「?………って!君よりも二周り、三周りくらい年上じゃないか!」
「おい、こっちなんて56歳だとよ」
「うわー」
全員私ではなく、天女の力だけを見て送ってきている。だからご高齢の方が多い
天女が傍に居れば不幸は訪れず恩恵がくる…みんな長生きしたいのね
「…そんなに嫌ならさ、家に断ったら〜?」
「え?」
「"私は私が決めた人と一緒になりますからもう送ってこないで"って」
「出来たら良いんでしょうけど…」
「出来ないの?」
「言っても怒られるだけですから」
『…』
前世がそうだった…
私は自分で決めた方と一緒になりたいと言ったら激怒され、何とかその人と逃げたけどあっさりと見つかり離れ離れにされ…私は殺処理された。
その時の家の者の声は覚えてる…
"今回の先祖返りは駄目だったな"
"あぁ。役立たずが…次の先祖返りはちゃんと見張ってろよ"
"我が家の恩恵は途絶えてはならぬのだ"
ポンッ
「!」
「伊織…」
「…琥珀、さん」
「これ。全部私が奥方様に返しておくよ」
「え、えぇ…お願い」
「天宮さん。少し顔色が悪いですね…少しお休みになられては如何ですか?」
「…有難うございます。そうさせていただきますね」
「伊織ちゃん大丈夫?お姉さんが添い寝してあげましょうか?//」
「野ばらちゃん。とりあえず鼻血拭こう」
「有難うございます。でも大丈夫ですので…お先に失礼しますね」
バタンッ
「っ」
「伊織」
「…ねぇ琥珀さん?私ね思うの」
「何を?」
「この転生の輪から外れて…自由に生きたいって…」
「伊織…」
「…」
「ちよちゃん…心配だね」
「あぁ…」
「あ、凛々蝶が素直になった」
「!あ、いやっそ、その…!」
(…伊織たん…)
「夏目さん」
「!…なぁに?そーたん」
「何かお見えになったんですか?」
「どうして?」
「天宮さんが出ていかれてから思いつめた表情をしていたので」
「…そーたんは鋭いな」
「では」
「でも…残酷過ぎてボクからは言えない」
「そんなに酷いものが見えたって言うの?」
「…天女って…美しくて慈愛に溢れてるけど、地上に降りたら可哀相な存在だね」
「…」
"天女を祀れ。
さすれば恩恵を受けたまわん"
そんな言葉…どこで誰が言って広まったのだろうか…
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ごめん。シリアスのような…ごちゃごちゃだね。
ごめん。
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