白石side―



「ここいらで少し休むか」

「せやね」


なんでこんな事になってしまったかなんて誰も分らへん

俺達は今この残酷な現状を真に受けなくてはいけないだけや


「テニスしたい」

「金ちゃん。我慢しぃや」

「む〜」

「金ちゃんは合宿楽しみにしとったからね」

「コシマエと試合出来る思うとったんに…なんでや」


いつも元気で大きい声を出す金ちゃんがこんな弱々しい声を出すなんて…

せやけど俺たちも全員金ちゃんと同じ気持ちなんや。みんなテニスするために来たっちゅーんに…なんで殺し合いなんて…!

しかも師範までも…!


「…」

「金ちゃん?」

「もう…銀に会えへんの?」

「…」

「…」

「なぁ。嘘やろ!死んでへんよな!?なぁ!」

「金ちゃん…」


千歳が抱きしめても金ちゃんはまだ「なぁ!なぁ!」と否定しようとしていた

何も答えられへんかった。ここで「もう会えへん」なんて答えたらどうなるんや

俺達かて信じられへん…師範がもうおらへんなんて


「…」

「どないしたんや?」

「…今…誰か居った」

「!千歳!金ちゃんを!」

バッ


千歳は金ちゃんを抱えて木の後ろに隠れた

俺は支給された銃を構えて辺りを見た。アカン…手ぇごっつ震えとるやん

こんなに怖いなんて…せやけど…仲間守るのが部長やっちゅー話や!


ガサガサッ

「!」

「…千歳」

「大丈夫」

ガサ、ガサガサ

「だ……誰や!!」


銃を茂みの方へ向けた

すると誰かが出てきて


「わああ!白石なんてもの向けてんだよー!」

「!…君は…青学の…」

「菊丸だよーん。久しぶり…って状況でもないけど」

「……なんやねん!驚かすなや」

「はぁ…無駄な気、使ったっちゃ」

「猫の兄ちゃんや!」

「やほーい」


良かった…彼は誰かを殺すとかそういうんしないと思うから安心や

向けてた銃を下ろしてジャージの尻ポケットに仕舞った

菊丸君も誰かに会えて嬉しいのか明るい顔で俺等の傍に来た


「良かったにゃ〜今まで誰にも会えなかったから安心した」

「今まで一人やってん?タマゴの兄ちゃんどないしたんや?」

「大石の奴どこにも居ないんだよ。待ち合わせ場所にも居なかったし」

「まぁこういう状況やからね」

「これからどーしよ」

「…なら、俺等と一緒に行動するか?」

「え!」

「白石」

「こんな状況や。一人は心細いやろ?それにこれは俺の考えやけど俺は青学のみんなを信じとる。準決勝で試合した仲やし」

「…うぅん…俺も四天を信じてるにゃ!絶対裏切らないしむしろ何でも協力するよん!」

「おおきに」

「そんじゃあこれからは4人で行動やね」


菊丸君が入ったおかげで空気が明るくなった気がしたんや

金ちゃんも笑顔を取り戻しつつあるし。何より菊丸君の雰囲気がみんなを明るくさせてくれるっちゅーかなんちゅーか

せやけど信じられる人でほんま良かった。大石君も探さないかんな








切原side―


「あー…くそっ」


森に出てからずっと一人

先輩にも他校の奴等にさえ会わねぇ……今更だけど独りって寂しいな

俺は先輩たちが居て当たり前だと思った。離れないでずっと傍に居られるって思ってた

でも今は違う。みんな自分の命が大切なんだ。だから仲間を思う暇ないと思う。だからこんなにバラバラになっちまうんだ


「…こんなんで、どうしろっつーんだよ」


俺の支給されたものは武器でもなんでもねぇ…睡眠薬

何?これで自殺しろって?ざけんじゃねぇっての。マジ有り得ねぇだろ

怖い…もうそれしかねぇ…誰でも良い。俺の傍に居てくれよ…


「――っ!―、」

「―――!!」

「?」


遠くから声が聞こえた

それも、言い争ってるような荒々しい声。俺は自然にその声のする方へ歩いていた。誰が争ってんだ?まさかそのまま誰かを殺っちまうなんて事ねぇよな?

誰だよ…誰が言い合って――――


「だーから!こっちだっつってんだろ!?」

「違ぇ!こっちだ!!」

「あんだと!?さっきはお前の意見で来たんだから今度は俺だろ!?」

「テメェはいつも出鱈目じゃねぇか!」

「ぁあ!?」

「やんのかコラァ!」

「…どうでも良いから早くしてくれ…」

「青学の、桃城とマムシと…氷帝の…日吉…?」


言い争ってたのは青学の桃城と海堂だった。その真ん中に氷帝の日吉がため息を漏らしていた

…なんだ。こいつ等かよ…

すると日吉と目が合って一瞬ビクッとしてしまった


「お前…立海の切原」

「…ど、どーも」

「切原ぁ!?」

「フュウウウウ…無事だったんだな」

「あ、当たり前だろ?厳しい練習で毎日鍛えてんだ。走るのなら得意だっつの」

「はっ…みんなそうだろ」

「っ!」


日吉はボソッと言ったのだろうけど俺には聞こえた

ま、まぁ確かに誰でもそうだろうけどよ!


「お前一人なのかよ」

「っ、あ、あぁ…そう、だけど」

「…」

「言っとくけど別に殺り合うとか考えてねぇから」

「何?」

「俺の武器、睡眠薬なんでね」

「確かにそれじゃあ誰も殺せねぇな」

「そんじゃ…この状況だと、俺達の方が有利って事か」


日吉の言葉にドキッとした

まさか…こいつ等、え…マジ?ふざけんなよ。誰が殺されるか…!

もしその気だったらこっちだって…!!


「じょーだんだってー!怖い顔すんなよー!」

「…は?」

「俺達は別にそんなつもりはねぇ」

「だ、だって日吉…!」

「状況だけでならだろ?真に受けるなよ」

「お、前…!」


くそー俺が今までどんな思いで居たと思っていやがんだ!


「切原、お前一人なら一緒にくるか?」

「は!?」

「急にどうした?」

「こんな状況じゃ一人は怖ぇだろ?殺る気がねぇんだったら一緒に行動したほうが良いだろうしよ」

「ふん…勝手にしろ」

「そんじゃ決まりだ!」

「お、お前等がそう言うんなら仕方ねぇ付いてってやるか」

「素直になりやがれ」


嬉しかった。凄ぇ嬉しかった

有難う…それしか言葉が出なかった



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