微糖
甘くもなくて苦くもない。
それが二人にとっての距離感
そんな二人を表すとしたら―――
「―――今日も任務お疲れ、リボーン」
「―――ん?……ああ、名前か」
ボンゴレアジトのとある一室。
ソファに寄り掛かる、ボルサリーノを被った青年に声をかけたのは、お盆の上に2つのコップを乗せて立つ女性。
彼女―――名前は、ボンゴレを担うリボーンの部下だ。
そんな名前が持ってきたコップをリボーンに渡せば、彼はほんの少しばかり頬を緩めた。
「……ちゃんとエスプレッソを煎れてくれたんだな」
「当たり前でしょ。貴方のお気に入りくらい把握してるわ」
ニヤリ、そんな笑みを貼り付けながら、エスプレッソを口にするリボーン。
そんな彼を見て、名前もニヤリと笑った。
この二人の関係は、なんとも曖昧なものである。
別に付き合っているわけではないし、名前がリボーンの愛人だというわけでもない。
ただ、上司とその部下。
それ以上でも、それ以下でもなかった。
ただ他人と違うところを指摘するならば、名前は他の部下と違いリボーンに対して敬語を使わない。
これは、リボーンが名前を自分の部下にと推したその時からずっと続いているものだ。
「……でも、エスプレッソって苦くない? 私、苦いのってあまり得意じゃないんだけど……」
「……はっ。これくらい飲めねぇと、立派な大人とは言えねぇな」
「んな……っ! 私もう成人してるんだけど!」
そう言いながら、名前も自分用に持ってきたコップに口をつける。
それを見たリボーンは、不意に立ち上がると名前の持つコップを奪い取った。
「お前は何飲んでんだ?」
「あっ……!」
気づくも時既に遅し。
数秒前まで名前の手にあったコップは、リボーンに奪われていた。
名前が慌てて取り戻そうとするが、その前にリボーンはそのコップの中身を一口飲んでしまっていて。
「……お前、エスプレッソに砂糖いれたのか?」
「……っ、悪い?たまには飲んでみたいと思ったから……」
「ふーん?」
中身を口にして、少し表情を顰るリボーンに、名前は少し紅潮した頬を隠すかのようにそっぽを向く。
それを見て、リボーンはクツクツ笑うとグイッと名前の腕を引き、そして―――
「んっ……!?」
「……くくっ……ごちそうさま」
名前に、軽く口づけを落とした。
微糖
(言い表すのであれば)
(二人の関係は)
(“微糖”なのかもしれない)
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昔別サイトで書いていた大人リボーン夢。
お題を選んで書いたもので、選ばせてもらったのが「微糖」でした。
コーヒーの件を書きたかっただけ←