AKUMA大襲撃
ティキがいなくなり、周りを囲むAKUMA達が一斉に紗雫に向かってきた。
紗雫は舌打ちをすると、構えた銃で近くの数体のAKUMAを撃つ。
AKUMAが破壊されたのを横目で見て、紗雫は間髪入れずに槍を振るった。
――…っ、量が、多い…!
囲むAKUMAはみなLevel.2以上のAKUMA。
もしかしたら、Level.3もいるかもしれない。
だが、それでも紗雫は簡単に負けるつもりはなかった。
飛んでくる無数のAKUMAの攻撃を、銃で撃ったり槍で受け流したりと相殺させる。
「砂光[サコウ]!」
蹴り上げた砂を光らせ、AKUMA達の目を眩ませる。
その間に、また数体のAKUMAを破壊した。
「エクソシスト! エクソシスト!」
「殺ス! 死ネ!」
「…そう簡単に、死なない」
ケラケラと笑うAKUMAを、紗雫は睨みつけた。
ただ真っ直ぐに、銃を構えそして。
「変更[チェンジ] 空雷弾」
銃の引き金を引く。
空気を弾にし、雷を纏う弾へと変化させる。
それを、AKUMAに放った。
撃たれたAKUMAから、弾に纏われた雷が他のAKUMAに移っていく。
連鎖するかのように、次々とAKUMAが破壊されていった。
それでもなお、AKUMAは湧き続ける。
「…笑えないな、ほんと」
乾いた笑みを漏らし、周りのAKUMAを見渡す紗雫。
増えていくAKUMAは、そんな紗雫を嘲笑うかのように見下ろしていた。
ジ … ジ ジ ッ……
「…は、ぁ…。…生…てる…」
『…探索…隊に……索を頼ん………けど…』
「コ…ムイ…」
耳元に聞こえる機械音。
なんとかあの後AKUMAを全滅させた紗雫は、その音で意識を覚醒させた。
どうやら、ゴーレムが紗雫の耳元に近づいているらしい。
そこから聞こえた声に、紗雫は掠れた声で名前を呼んだ。
『紗雫ちゃん! よかった…。隣町にいた探索部隊が知らせてくれたんだ。他のみんなは?』
「…悪い…みんな…」
朦朧とする意識の中で、紗雫はそう呟いた。
その言葉の意味を、コムイは汲み取ったらしい。
『そうか…。紗雫ちゃん、君は大丈夫なのかい?』
「…意識を、繋…ので精一杯…だ…」
『…! わかった、すぐに探索部隊を向かわせる…!』
「……」
『紗雫ちゃん? 紗雫ちゃん…!?』
――コムイside.――
紗雫ちゃんから任務の報告があり、ハートと神狩りのことを伝えた数時間後。
クラウド部隊の近くに向かっていた探索部隊から連絡があった。
それは、紗雫ちゃん達クラウド部隊がいる町が、見るも無残な状況になっているということだった。
嫌な予感がし、僕は紗雫ちゃんについているゴーレムに連絡を繋いだ。
「紗雫ちゃん、紗雫ちゃん!」
「…どうしたんすか、室長?」
「…紗雫ちゃん達の部隊が、もしかしたらAKUMA達に襲撃されたのかもしれない」
「! それって…」
「まだわからない。探索部隊に今捜索を頼んでいるけど…」
『コ…ムイ…』
紗雫ちゃんの掠れたような声に、僕は慌ててそちらに意識を戻した。
「紗雫ちゃん! よかった…。隣町にいた探索部隊が知らせてくれたんだ。他のみんなは?」
『…悪い…みんな…』
申し訳なさそうなその言葉に、僕は他の三人が恐らく死んでしまっただろうことを感じ取った。
せめて、紗雫ちゃんが生きていてくれていることだけでも奇跡なのかもしれない。
「そうか…。紗雫ちゃん、君は大丈夫なのかい?」
『…意識を、繋…ので精一杯…だ…』
「…! わかった、すぐに探索部隊を向かわせる…!」
『……』
「紗雫ちゃん? 紗雫ちゃん…!?」
紗雫ちゃんの身を案じてそう問えば、紗雫ちゃんの声がどんどんか細くなっていった。
これは急がなければならないと、そう思い先程連絡をしてくれた探索部隊へ連絡を繋ごうとそう伝えるが、紗雫ちゃんからの返事が来ない。
名前を呼んで呼び掛けるが、それ以上紗雫ちゃんから返事が来ることはなかった。
「…っ、リーバー班長、さっき連絡をくれた探索部隊に連絡を!」
「は、はい!」
通信の向こうから聞こえる紗雫ちゃんの呼吸音が、浅い。
紗雫ちゃんの状態が危険だという事実が伝わってきた。
リーバー班長が僕の指示に従い、慌てて通信を繋ぐ。
僕はひたすらに、紗雫ちゃんの無事を祈るしかなかった。
ただ祈る
(それから数十分後)
(探索部隊より紗雫の無事が伝えられた)
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