部隊入隊へ
それから数日して、紗雫に新たな任務が告げられた。
それは、元帥を元に別れる部隊への入隊と、その指定された部隊への合流。
紗雫は"クラウド・ナイン"という元帥につく部隊に入隊することになっていた。
「…じゃあ、行ってきます」
「うん、他のみんなによろしく頼むよ」
他のメンバー、元帥の元についているのは、ティナ・スパーク、グエン・フレール、ソル・ガレンの三人だ。
今はクラウド元帥とは別行動で任務についているらしく、とりあえずその任務に合流するのが最優先の任務。
彼らは今、大量に発生しているAKUMA退治の任務についているらしく、紗雫は気を引き締めると教団をあとにした。
場所はフランス。
教団を出た数日後、紗雫はとある町を訪れていた。
次の町に、合流すべき部隊のメンバーがいるという。
次の町へはそう遠くはなく、紗雫は一人歩いて町へと向かっていた。
隣町でAKUMAとの戦闘が行われているというのに、この町は酷く静かで紗雫は自嘲するかのように笑った。
――私達の戦いを、知らず平和に生きている人はたくさんいるんだな。
平和であることはいいことだと、紗雫は思っている。
こうしてこの町がAKUMAに侵されていないことは、喜ばしいことなのだろう。
それでも、紗雫は腰に付けてあるホルダーに手をかけた。
その次の瞬間。
「ヒヒヒ、エクソシスト見ツケタ!」
「――遅い。イノセンス、発動」
通りすがった町民が、AKUMAへと転換[コンバート]した。
振り返りざまに、紗雫がそのAKUMAへと二本のナイフを投げつける。
それらは真っ直ぐにAKUMAの頭へと突き刺さった。
深く突き刺さったそれは、一瞬でAKUMAを破壊すると、ナイフから木の枝へと戻った。
「…案外、潜んでるもんだな」
静かな町に、ざわめきが起こる。
そのざわめきにつられてなのか、近くにいた町民数人がAKUMAへ転換し紗雫の方へと向かってきた。
「随分と多い…。だが、」
飛んできた弾丸を触れ、一瞬でそれを水へと変える。
そして、懐に手を入れた。
取り出したのは一本の長い紐と短い紐。
それを十字に構え、真っ直ぐにAKUMAを見据えた。
「転換 両鎌槍」
一瞬光ったそれは、両鎌槍へと姿を変えた。
それを構え、紗雫はAKUMAに向かい走りだした。
つい最近気づいたことだが、紗雫の能力は転換の想像と共に名を口にすることにより、武器の強度が増すことがわかった。
もちろん、武器だけでなく盾の強度も然り。
だから、紗雫はいくつか専属で使う武器を決めていた。
足場の土を一瞬ゴムに変え、勢いをつけてAKUMAへと突っ込んでいく。
片手で目の前にいるAKUMAに槍を突き刺し、片手でナイフを数本投げる。
槍もナイフも正確にAKUMAの頭に突き刺さり、また四体のAKUMAが破壊された。
間髪入れずに飛んでくるAKUMAの弾丸を、宙を蹴って避ける。
そして、残り一体となったAKUMAの頭上に乗り、槍を突き立てた。
「…哀れなAKUMA、どうか安らかに…」
目を伏せて、槍を紐へと戻す。
今破壊したAKUMAの魂がどうか安らかであるように、そっと心の中で祈り紗雫は再び歩き出したのだった。
それからしばらく歩くと、次の町へと辿り着いた。
火の匂いに混じって、血の匂いが町に充満している。
町は静けさに覆われており、紗雫がゆっくりと町を歩いていくと見慣れたコートを視界に捉えた。
紗雫が駆け寄っていけば、見えたのはエクソシスト三人の姿。
「…クラウド部隊の方々ですか?」
「…ん? もしかして君は…」
「はじめまして、紗雫と言います。今日付けでクラウド部隊に入隊することになりました」
一人の男性が振り返る。
紗雫の姿を確認すると、三人はホッとしたように微笑みを浮かべた。
「よかった、無事に合流できて」
「…先程、AKUMAを六体破壊してきました。こちらは無事でしたか?」
「あぁ、大丈夫だ。…探索部隊が全滅してしまったけどね」
申し訳なさそうに紗雫に告げてきたのは、ティナ・スパーク。
他の二人もまた、悲しそうに目を伏せた。
それほどまでに、襲撃してきたAKUMAの数が多かったのだろう。
仕方ないとは言い切れないが、町が全滅しなかっただけでも幸いと言える。
「…だが、AKUMAは殲滅できた。とりあえずは、任務完了だ」
スパークの言葉に、紗雫と二人は頷く。
そして、四人はその町を出たのだった。
入隊完了
(コムイから次の任務を告げられ)
(四人は次の町へと向かっていった)
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