ラストダンス
広い広い部屋。
長いテーブルには、数品の料理。
アレン達とティキは、その部屋で対峙していた。
悠々と席に着くティキ、席に促すティキとロードの言葉に、アレンもまた席へ着く。
それに倣ってラビとリナリー、チャオジーもアレンの近くの席へと座った。
そこで、アレンはティキが抱えている人物に気がつく。
「…紗雫さん…! ティキ・ミック、貴方、紗雫さんに何を…!」
「眠ってるだけだ。怪我とかしてるわけじゃねぇよ」
そう言って、ティキは紗雫の頭をそっと撫でた。
優しく紗雫を見下ろすティキの目は、敵であるはずの紗雫に向けるには違和感がありすぎて。
そんなことを思いながらも、アレンはロードをしばらく見つめ、それからティキへと視線を戻した。
「ティキ・ミック…」
「…さて、やっとゆっくり話せるようになったな、少年」
アレンの呟くようなその声に、ティキの視線が真っ直ぐアレンに向く。
ラビ達は、険しい顔でティキを見ていた。
「…そんな顔すんなって。可愛くねぇなぁ、罠なんて仕掛けてねぇよ。イカサマはしないって言ったろ?」
「大丈夫だよぉ、アレン」
「ロードたま、ひっついたらダメ、ダメレロ!」
アレンに飛びつくロード。
それに対し、怒るレロ。
ロードはただニコニコ笑っていた。
「出口の扉は、この塔の最上階にちゃぁんと用意してあるからさぁ」
「…ちゃんと外に通じてればいいんですが」
アレンの言葉に、ロードはクスクスと笑う。
そんな二人に対し、リナリーは難しい顔で俯いていた。
泣きそうなリナリーに、ラビがそっとリナリーの手を掴んだ。
リナリーを励ますように。
ラビのその気遣いに、リナリーは涙を拭うと真っ直ぐ前を向いた。
それからしばらく、アレンとティキの会話が続く。
会話の中心は、アレンのイノセンスのことだった。
ティキにとっては、壊したはずのイノセンス。
ティーズによって開けたられたはずの心臓の穴も、イノセンスが心臓の一部となってアレンの命を救っていた。
「…ロード。そろそろ少年から離れてくんない?」
「えぇっ! 愛してるのにぃ!」
「あ、あの…」
ギュッとアレンに抱き着くロード。
それに対し、困ったように苦笑するアレン。
そんなロードとアレンを見て、ティキは笑った。
「こらこら、エクソシストとノアの恋は実らねぇぞ」
「…ティッキーだって人の事言えないじゃんかぁ」
「…それは言わんでいいの」
ロードの呟くような言葉に、ティキは少しばかり苦笑すると、椅子から立ち上がる。
そんな二人を見て、アレンは不思議そうにロードを見た。
しかし、ロードは不思議がるアレンを見てただ楽しそうに笑う。
「…俺ねぇ、千年公の終焉のシナリオっての、遊び半分で参加してたんだけどさ。やっぱ悪はそうでなくっちゃなぁ…。うん、少年のおかげでちょっと自覚出てきた」
煙草の煙が宙に舞う。
ティキは紗雫を自分が座っていた椅子に、凭れかかるように座らせた。
椅子に凭れかかるようにして眠る紗雫は、起きる気配が全く感じられない。
そんな紗雫に、アレンは表情を険しくさせながらも、ティキへと視線を戻した。
「…退治? 本気でやんねぇとなってのが、わかったわ」
ティキの言葉と共に、ティーズがリナリーの肩へと舞う。
だが、ティーズが肩に止まる前に、それはアレンの爪によって破壊された。
「ティキ・ミック。僕も一つ言っておきたんですが…これ以上、僕の仲間に手をかけたら…僕は貴方を殺してしまうかもしれません」
呟くようにそう言ったアレンの目は、本気だった。
そんなアレンに、リナリーは驚いて目を見開く。
「リナリー信じてて、あいつは僕が行く」
「…少年のことは、嫌いじゃねぇんだがなぁ」
それが、戦闘開始の合図だった。
アレンは椅子から立ち上がると、机に上りティキの元へ真っ直ぐかけていく。
ラビのところへはロードが。
そして、ロードの能力によって、リナリーとチャオジーがサイコロのような箱へと閉じ込められる。
紗雫もまた、椅子ごと箱のようなものへと入れられた。
遊ぼうというロードの誘いに、ラビが乗る。
勝ったらリナリーとチャオジー、そして紗雫を解放するという条件をつけ、ラビとロードの戦いが始まった。
一方で、アレンとティキの戦いも始まっていた。
ティーズを上手く使い攻撃してくるティキに、神ノ道化を駆使して戦うアレン。
戦いの火蓋が、切って落とされた。
それぞれの戦い
(さあ、遊ぼう)
(夢の世界へようこそ)
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