貴方を愛し続けると誓う


 
※年齢操作

 
「この日は俺と半田の背番号があるから記念日だね」

 ニコニコと笑いながら彼は赤ペンで大きく丸をつけた。
 たったそれだけのことなのに、俺にとってはすごく嬉しかった。でも恥ずかしくて冷たいことしかいえなかった。



 雷門中学校を卒業してから結構な月日が流れた。俺はもう、大学生になった。
 やっと見つけ目標のために日々、勉強に励んでいたのだけれど……。


「……はあ」

 最後に一之瀬に会ったのはいつだっけ? 思い出せないくらい結構前なのかもしれない。

 あいつはアメリカでプロのサッカー選手になるために頑張っている。いろんな障害を乗り越えて、こうやって頑張る彼をすごいと思うと同時に、こんなにも会えないことを寂しく感じる。

 ――自分が素直だったら? そしたらここまで寂しくなかったのだろうか。

「はーんだっ」

 考えに更けていると、後ろから抱き着かれる。驚いて後ろを見ると中学からの付き合いである松野の姿があった。

「うわっ、な、なんだ……マックスかよ」

「マックスかよって何さ。それより元気なさげだけどどうかした?」

 松野とはなんだかんだで親友という関係だ。高校は違ったものの、また大学で再会を果たした。

 元々、松野は勘がいい。付き合いのそこそこある俺のことならなおさら。
 松野は呆れたようにため息をつくと「一之瀬のことでしょ」と言った。

「……うん」

「あ、珍しく素直に認めたね」

「だってお前になんかいろいろ言っても無駄だろ?」

「ふーん。まあ……半田が悩む理由って大体、一之瀬関係じゃん」

「そうか?」

 俺が驚いたように問い掛けると、松野は「そうだよ」と苦笑した。

「まあ、半田らしくていいんじゃないの。――あ、僕、まだこの先、講義あるから。じゃあね、半田」

 マックスは「きっと大丈夫だよ」とわけのわからない言葉を残して、その場を後にした。

 俺は、今日の講義がすべて終わっていた。このまま大学に居続けても特にやることもないため帰宅することにした。


 ゆらり揺れる電車の中、あの日のことを思い出していた。

 中学生だったころのとある夏の日。
 俺の家に遊びに来た一之瀬がニコニコ笑いながらカレンダーを見せたんだっけか――。

「なにそれ」

「えー半田ぁ、これ見てなにか気づかない?」

「えー、あ、今日の日付に丸がついてる」

 今日――7月6日に丸がついている。
 一之瀬は瞳をキラキラ輝かせて今日の日付を指差すも、俺には意味がわからなくて。

「今日は俺と半田の背番号の日なんだよっ!」

「あ、言われてみれば……」

 雷門でも一之瀬は16番だけれど、アメリカのチームでは7だったっけ。

「だから今日は俺と半田の記念日なんだよっ」 
 そして今日も7月6日。

 今までは、この日になると手紙と電話が来ていた。電話に関しては日付が変わってすぐに来ていたというのに……今日はまだ来ていない。

「一哉の、ばか」

 それが当たり前になっていた。それと同時に自分からはなにもしてなかったことに悲しくなる。

「……あとで、電話してみようかな……」



 しばらくすると地元の駅に着く。家が近くなってくると、なにか人影が見えた。


「?」

「あ、真一」

「え……?」

 手にしていたかばんが落ちた。それくらい今の状況が信じられなかったのだ。

「俺だよっ、元気だった?」

 そう言った彼の声と仕種はまさに一之瀬のもので――。

「うそ……、一之瀬? なんでここにいるの」

 今にも泣きそうで震える声でそう問い掛けると、一之瀬は笑顔でこう言った。

「なんでって会いに来たんだよ。だって今日は記念日じゃん、俺と半田の」

「……あ、とりあえず家入るか?」

「じゃあそうさせて貰おうかな」

 俺たちは家に入る。
 今、俺は一人暮らしなため、そんなに広くない部屋に二人一緒にいるには窮屈だった。

「いきなりお邪魔してごめんね。ちょっと休みが出来たからさ。どう? 半田、元気にしてる」

「あ、まあ……、一之瀬は?」

「なんだかんだで毎日楽しくやってるよ。ほら、土門たちも一緒だし」

「そうかよ、よかったな」 あぁ、なんでこんなに冷たく言ってしまうのだろうか。土門たちが羨ましくて仕方ない。一之瀬と一緒にいられるから。


 ふと顔をあげると、一之瀬がニヤニヤ笑っていた。ひょっとしたら自分の考えたことに気付いたのかもしれない。

 そしたら急に恥ずかしくなって、顔が熱くなった。


「あのね、半田。俺、渡したいものがあるんだ」

 一之瀬はそう言って、かばんから小さなお洒落な箱を出した。その中には――

「真一。愛してるよ。これからもその気持ちは変わらないと思う。だから――俺と結婚してくれないか?」

 一之瀬の真剣な声。

「それと一緒に、アメリカに来て欲しいんだ」

 瞳から涙が零れる。
 それくらい嬉しかった。

 嬉しくて、嬉しくて。
 その気持ちを素直に伝えたくて。でも相変わらず変わってない俺が素直になれるわけなくて。

「ねぇ、真一の答えは?」

 そして一哉は俺の答えがわかりきってるくせに聞いてくるからいじわるだ。

「態度だけじゃ足りない。真一の言葉が欲しいんだ」


「仕方ないな……一緒に暮らしてやるよ、一哉!」


 きっと、これを幸せっていうのかな。

………………………

7/6は一半の日!
前のサイトから引っ張ってきたものを一部、加筆修正。


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