結婚式はいつにしようか!
「ねぇ、真一」
一之瀬が自分を名前で呼ぶときはだいたい嫌な予感しかしない。
ただ、返事をしなかったらしないで、すごくしつこいので仕方ないから適当な返答をする。
「このカタログ見て!」
一之瀬がバンと机に広げたのはウェディングドレスのカタログだった。
それに呆れる俺に対して、かなり瞳を輝かせる一之瀬。
「……一応聞くけどこれなんだよ?」
「やっだなー聞いちゃうの、半田ってば」
ウィンクをしてオネェみたいに言う一之瀬に俺は苛立ちを覚える。
「いいから答えろよ」
そう早口で言うと、「照れちゃってかわいいなー」なんて勘違いを一之瀬はしていた。
「ウェディングドレスのカタログだよ。俺なりに半田に似合うのを選んでみたんだ」
一之瀬の言う通りカタログにはところどころ付箋がついている。
「……一之瀬さん、このさいなんで女装なのかとかは突っ込まないよ、めんどくさいから。……ただ、このチョイスはなに?」
「え、あぁ。やっぱり純白のドレスっていいよね! 他にもチラッて足が見えるかわいいのもあったんだけど、真一のかわいい足は俺だけが見れればいいから却下。ふわってスカートがなってるのもかわいくて似合いそうっ! ねぇ、真一はどれが好きかな?」
女の子でもここまできたら、呆れてしまうかもしれない。だったら男は? 当然、俺は呆れ果てて何も言えない状態だ。
しかし一之瀬はそれを照れてると都合よく勘違いすると、ガサゴソとかばんを漁り始めた。
「な、なんだよ……っ」
まだドレスのカタログがあんのかよ、と少し後ずさる。すると一之瀬が出したのは小さな箱だった。
「中身はまだだけど……いつか、絶対渡すから」
サッカーをやっている時みたいに真剣な顔の一之瀬に俺は少しドキリとする。
「だから――」
「……」
「結婚式はいつにしよっか!」
――前言撤回。
やっぱり一之瀬は馬鹿だ。
結婚式はいつにしようか!
(期待してる自分もいたりする)
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