些細なことでも幸せで


 
 恋をしたらどんな小さなことでも幸せになる。むかし母親が言っていた言葉だ。

 たしかにそれは本当だと思う。
 だって、ほら――

「風丸ー、教科書貸してー」

 声のした方を見ると、ドアからひょこっと顔を出した半田の姿を発見した。
 俺が教科書を渡すと、申し訳なさそうに苦笑しながら「ありがとな」と返す半田。

「あ、そうだ。さっき円堂から聞いたんだけど今日の部活――……」

 他人から見たら些細なやりとり。でも俺はそれが嬉しくて仕方なかった。

 本人には伝えたことないが(伝えられるわけない)、俺は半田に恋している。きっかけは覚えていないがサッカー部に入ってからだろう。

 こんな小さな些細なことの積み重ねが堪らなく嬉しくて、暖かい気持ちになる。

「風丸、聞いてんのかよー」

「あ、ごめん」

 ほおをぷくーと膨らますとか、男子中学のくせに可愛いなオイ。
 本音が漏れそうになるのをどうにか抑える。

「珍しいな、風丸がボーとしてるなんて。なんか悩みごとか? まさか、好きな人でも出来たのか」

 ニヤニヤしながら問い掛ける半田に、俺は適当にごまかす。すると半田は「つまんないなぁ」と頬を膨らます。

 やばい、頬を膨らますとか……まじかわいいんだけど、半田さん。

「俺、風丸のこと好きなのになぁ……」

 半田は独り言のつもりで言ったのだろうが、その言葉はたしかに俺の耳に入った。

「え、半田……」

「あ、いや……その、と、友達としてだよっ。風丸といると楽しいし……」

 顔は真っ赤で、慌ててごまかそうとする半田。
 ――え、うそ、まさか。


「あーっ、風丸といるの、すっげぇ、幸せなんだよっ」

 半田はそう叫ぶと早足で自分の教室へと戻っていった。周りの人たちの視線が痛い……。


 でもそんなことよりも――、


些細なことでも幸せで
(まさか半田も同じ気持ちなのか?)


*****************

遅くなってすみません\(^o^)/
風半の半田は割と素直だと思ってたりします、あと風丸さんはムッツリスケベ←

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