あの日の告白はまだ続いていますか?
「……ごめん、おれ、しんいちとはつきあえない。だって、ほかにすきなひとがいるから」
――その言葉が今でも胸のどこかで刃となってグサリと刺さり続けている。
幼い頃は曖昧な気持ちで“好き、結婚しようよ”なんて言ってしまう。でも、あの時の俺はたしかに本気だったんだ。
あれ以来、恋をするのが怖くなった。お蔭様で高校生になっても彼女いない歴=年齢という悲しい式が成立している。
「ねー、半端ぁ」
「半端じゃねぇよ、半田だよ」
「知ってるよ。そんなことより今日、クラスにアメリカからの帰国子女が来るんだってさ」
“アメリカ”というこの四文字に俺は思わず反応してしまう。妙に感のいい俺の友人であるマックスは「ひょっとして例の彼なの?」だなんてニヤニヤ笑いながら聞いてきた。
「は、ちげーよ。だいたい、あいつとはあの後連絡とってないし。アメリカにいるってくらいしか知らないもん」
「ふーん。ま、いいけど」
そろそろ先生来るから座るねと、マックスは妙にいい子ぶると自分の席に戻っていった。
俺はそんなマックスの姿を横目に、机に顔を伏せる。
(……あいつなわけないじゃんだって、あいつには)
――アメリカに大好きな彼女がいるんだから。
「よーし、お前ら席に着いてるな? 女子は喜べ、アメリカからイケメンの帰国子女がやって来たぞ」
担任の言葉にクラスの騒がしい部類に入る女子たちが黄色い声を挙げる。比較的大人しい女子たちも「どんな子かなー」なんてヒソヒソ話している。
「じゃあ、入っていいぞー」
「はい」
まだ姿を見ていないのに、その声だけで心臓がバクン、と鳴った。
声変わりしたというのに高めの声。チョコレートのような茶色の髪。相変わらずくりくりした黒の瞳。
あいつは、あいつは――、
「いち、のせ……」
俺は小さくそう呟いた。
「はじめまして。一之瀬一哉です」
「じゃあ一之瀬の席は――半田の隣だ。半田、手ぇあげろ」
担任の声に俺はビクリと体を震わせる。全く話を聞いていなかった、慌てて辺りを見ると一之瀬が近付いてくるではないか。
「久しぶりだね」
「あ、あぁ……」
俺は適当に返事すると一之瀬から目を逸らす。
だから次の一之瀬の行動に対応することが出来なかった。手を捕まれたかと思うと口づけを落とされた――。
「っ……!?」
「ねぇ、半田。俺、半田が好きなんだっ」
あの日の告白はまだ続いてる? なんて一之瀬は耳元で囁いた。
(そんなの続いてるに決まってるじゃん、ばーかっ!)
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一之瀬と半田が幼少期から仲良かった妄想
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