誇りをかけた、左耳のピアス


「お兄ちゃん、本当にいいの?」

 不安げに問いかける夕香。俺は夕香に顔を見せず「ああ、問題ない」と答えた。すると、夕香が「嘘よ!」と声を挙げた。

「嘘よ。私、お兄ちゃんの妹でずっと一緒にいたんだから気づかないわけないよ」
「夕香」

「ねぇ、本当にやらないとダメなの? 私じゃ力になれない? せめて、円堂さんや鬼道さんとかに相談しないの」

「いいんだ夕香、これで。それに俺一人じゃないからな。虎丸や夕香がいるから大丈夫だ」

 だから、我慢してくれないか? と夕香の頭を撫でる。俺は一体どんな表情をしていたのだろうか。夕香は不満そうなまま「……お兄ちゃん、無理しないでね」と言った。

「ありがとな、それとごめん」

「……ううん」

「でも俺はどうしても、守りたいんだ――」

 俺の人生の中でこれからも大好きであろうもの。
 そしてそれがきっかけで出会った大切な仲間たち。
 ――その中の、愛しい恋人を守るために、俺は俺の誇りをかける。

「そうだ、お兄ちゃん」
「なんだ、夕香」

「お兄ちゃんの耳にピアス開けてもいい?」

「なんでだ?」

「左耳にピアスの意味は”誇り”と”守る”。これからお兄ちゃんがやろうとしてることにぴったりだから」

「願掛け……みたいな、ものか?」

「うん」

 俺は夕香からピアスの入った箱を受け取る。

「そうか、ありがとな夕香」

 サッカーがきっかけで出会ったあいつ。
 そのきっかけが今、管理されようとしている。

 ならば憎まれてもいい。
 それでもお前と出会ったきっかけのサッカーを守れるのならば――。

『サッカーやろうぜっ』

 またいつか。
 お前とサッカーできるといいな、なんて思いながら俺はあいつの手を取った。


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