なにもウツラナイ


 
 ばいばい、俺の恋心。

 心の中でそう呟いて、彼との思い出の品をごみ箱にポイと捨てた。

 しょせん、彼とは釣り合うわけがなかったのだ。相手はフィールドの魔術師と呼ばれる世界でも有名な選手。それに対して俺は、一年の頃からの仲間の中でただ一人、世界に呼ばれなかった。

 悔しくて、悔しくて。
 励ましの言葉も同情の眼差しも全てが全て、いらいらの原因でしかなくて――……。

「やっぱ一之瀬は木野が好きなんじゃん」

 馬鹿みたい、自嘲気味に自分の口から呟かれる言葉。薄々気付いてた、そのはずなのに、視界はだんだん歪んでいく。

「……っ、馬鹿みたい、俺……なんで、なんでなんだよ」



そしてなにも
映らなくなった――。





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