ありったけのだいすき


 
 円堂はズルイと思う、最低だと思う。――だって、一度も円堂の口から「好き」の言葉を聞いたことがないから。

「風丸ー! 帰ろうぜーっ」

 そう言うのはオレンジのバンダナをして、太陽みたいな笑顔が特徴の俺の幼なじみで、そして……恋人の円堂 守だ。

「あ、あぁ」

 恋人同士なのにあまり恋人らしいことをしたことがない。しいていえば休みの日に買い物するぐらいだろう。

 俺だって健全な男子中学生なのだから、もっといちゃいちゃしたいとか思うし、もっと先のことだって……、円堂とならいい、そう思っていたりもする。

「風丸? なんか元気ねぇけどどうかしたのか」

「あー、いや、別にそんなことないと思うけど」

 こんな気持ち、円堂にバレたらどう思われるのだろうか。幻滅されたりしたら……、言えるわけがない。

「今日の風丸、ほんとなんかおかしいよ、俺でよかったら相談に乗るよ」

 円堂はそう言ってまた太陽みたいな笑みを浮かべる。

「なら好き……って言って、円堂から。俺、不安なんだよ、いつか円堂が俺から離れちゃうんじゃないかって」

 子供みたいに涙をポロポロとながし、そう言う俺に円堂は「風丸……」と小さく呟くと俺を抱きしめた。

「大好き、大好きだよ、風丸」

「円ど……」

「キス、してもいいか?」

 恥ずかしそうに俯きがちにいう円堂に風丸は優しく微笑んだ。

 もちろん答えは決まっている。
 


Thanks→Memory Girl


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