わんって泣いた(メローネ/jojo)
※なんでもOKな人向け
※思ってたより短い

何かに集中していると周りが見えなくなるタイプと昔からよく言われた。チームに入ってからもそれは健在で集中すると声も温度も感覚も何もかもを忘れてしまう。周りの奴らは呆れて声をかけてこないし、結果仕事は遂行するから誰にも文句は言わせないつもりだった。
「メローネ、アンタ寝てないでしょ」
「…」
肩を掴まれおよそ女とは思えない腕力で振り返らせられ、ジッと目を見つめられると大きな目を切なそうにしているなまえがいてため息をついた。
「やっと目線が合った」
「…そういえば少し眠いと思った、凄いな」
「ッ当たり前でしょ!!アンタもう2日は寝てないんだからね!?私が何回声かけたと思ってんの!?」
瞬きをして時計を見れば最後に見た時ときより日付が変わっていたし、思い返せばなんか周りが煩かった気もする。
「寝てないのか?」
「コンビ組んでるあんたが仕事してるのに寝るわけないでしょ」
目の前のなまえは青白い顔でため息をついた。ペアを組んだのはなまえのスタンドは母体を用意しやすいからであって、母体を確保すればそこで仕事は終わりなのに。気にせず寝ても良かったよ。と口に出しかけて手で口を抑えた。
「子どもは?」
「だいぶ成長したさ、今回のはスゴくイイ」
「ふぅん、なら良かった」
口を手で隠すなんて行為にもスタンドにも興味があるんだか無いんだかわからない表情をする。ベイビィ・フェイスの画面を覗いてしかめっ面をした後にくるっとこちらを見て眉間にしわを寄せた。
「少し寝な」
「まだダメだ、見張ってないと標的以外を食うかわからないし。なまえが先に寝な」
「私は少し仮眠とったよ、しばらく私が見とくから」
「…」
ギロッと睨まれ、心配をするような言葉に奥歯が痒くなる。チームで一番頑固な奴に捕まったのが運の尽きか…、渋々わかったと返事をすればなまえはほっと息を撫で下ろした。険しかった顔は和らいで、俺の頭を撫でる。

「ほら、そうとなったらあそこのソファでいいから横になって」
「3時間くらい寝るとしようかな、頼んだ」
「はいはい」
ソファに横になり目を瞑るけど眠気は一向にやってこない。さっきまで集中してアドレナリンが出てたのだから仕方ないし。ふあ〜とあくびは出るものの、ぼんやりと椅子に座るなまえを見てふと思いついた。

「なまえこっち来て」
「うん?」
彼女を呼べば大人しくソファへ近寄ってきて目の前でしゃがんだ。
「枕がないから寝れなさそう」
「なに贅沢言ってんの」
「膝枕してくれ」
「…高くつくよ」
「出世払いで」
「はいはいわかったわ」
ベイビィ・フェイスをソファの前の机に置いて、座ったなまえの膝に頭を乗せれば柔らかい太ももと暖かさに、集中力も途切れ眠気も湧いてきた。さらさらと髪を撫でる指先が心地よくて、うとうとする。
「ん…柔らかくて心地いいな」
「…起きたらぶっ飛ばしてやる」
髪の毛をぐしゃりと優しく掴まれてクスクスと笑う声が聞こえてそれも心地がいい。
「なまえの膝で寝れるなら集中するのも、悪くな…い…」
「…ばーか」

いつも見守るように俺を引っ張る彼女は、俺が知らないうちにも甲斐甲斐しく世話をやいていたらしく『まるでなまえはメローネの飼い主みてェだ』とプロシュートやギアッチョは笑った。
なまえが飼い主で俺がペットか、それもいい。そう言えば周りは引いていたけど、当の本人はゲラゲラと笑って「メローネがペットなんて勘弁!今でも手がかかるのにこれ以上手がかかるなら見てられないよ」ととぼけたことを言った。それに対して色々言いたい事はあったけど、なんとなく『今なら面倒見てもいい』とでも言ったような口調に少し安心したのも事実だ。

ときたま食事をしたり、優しく撫でたり、俺を叱ったり、俺を褒めたり。身体の関係はなかったけどたぶんなまえは俺の事を大事にしていたし、それなりに俺も大事にしていた。家族のような恋人のような友人のような飼い主とペットのような。

「なまえも殺られてる」

目の前に転がった死体は列車の中でバラバラになっていて、外に転がっているプロシュートやペッシより先に殺られたのだろう。電話越しにギアッチョにそう伝えた自分の声は思ったよりも淡々としていて、少しだけ自分の感情に落胆し驚いた。
『大丈夫なのか?』
「…なにが?ブチャラティの血液なら採取できてる」
『そうじゃねえよ、まぁいい。頼んだぜメローネ』
ぶちっと切れた通話先の相手の言葉を思い出す。

『大丈夫なのか?』大丈夫な訳ないだろ。
首から上だけになったなまえを少しだけ震えた手で持ち上げて唇に初めてのキスをした。きっといつもなら笑って怒るだろうその行為にも反応はなく、そっと腕で抱きしめる。

「なまえ」

次に会えたら先に目線を合わせて俺から名前を呼ぶから、もう一度俺を撫でて。