面従腹背(エレン/sngk)
※2012-2014年くらいに書いたやつ
(10巻の話)


彼に出会ったのは訓練兵になった時だ。真っ直ぐな目が印象的で、瞳の奥に強く熱いものを感じた。形だけでも既に捧げた心臓が煩く騒ぐ、同時に隣に立つ黒髪の女の子に足先まで凍った感覚も知った。

調査兵団に入ると言っていたエレンと憲兵団に入ると言っていたジャンはよく喧嘩をしていて、私はいつもエレンの味方をしたのを覚えてくれているのだろうか。そう言えばあの時に私エレンに聞いたね、エレンにとってミカサってどんな存在?そう聞いたら嫌そうな顔をして家族だよ、と言ったのを私覚えてる。その嫌そうな顔には何が含まれてたのか、今聞けるなら聞きたいな。私座学は良くなかったけど死に物狂いで訓練したんだ。エレンに少しでも近づきたくてね。それで着いてくるように調査兵団になったの。ああ、でも私は調査兵団に入ったのを間違いだと思わなかったよあの時まではね。


苦しい、悲しい、辛い。何故私はエレンの近くに生まれられなかったのか。なんでエレンは巨人化できるんだろうか。突然エレンに全てを言ったライナーを見て頷けば。私は目をそらしたくなるのを我慢してエレンを見つめた。
「お願いエレン、一緒に来てほしい」
「なまえ…お前まで…」
そんな悲しい顔はしないでエレン。私、エレン『だけ』の味方って言ったでしょ。ほら早く、もうすぐミカサが顔を変えてやって来るから。私がミカサの代わりにエレンを守ってあげるから。

案の定ミカサが斬りかかってきて私を守ったライナーとベルトルトが怪我をする。二人の鮮血とエレンの顔、ミカサの顔を見て心が冷えきっていった。そうだ私は何を馬鹿なことを。私はミカサになれないし、ミカサは私になれない。ねぇミカサ、悔しいよね。私はエレンの気持ちがわかるもの。でも私もっと悔しかったの、生まれた場所が違うだけでこんなにも差があるなんてね。二人に続いて巨人化をしてエレンを連れ帰る際。エレンの裏切り者、と言った言葉が心に刺さった。


面従腹背

本当はあなたに会わなきゃこんな思いを知らずに済めたのにって少し思ったの。