もしものはなし(アルミン/sngk)
※2012-2014年くらいに書いたやつ




もしもの話よ、聞き流して構わないから、少しだけ話をさせてね。そう言えば隣に座って月明かりで本を読んでいたアルミンは聞いているのか聞いていないのか軽く頷いて本のページを捲った。夜の風に当たりながら、アルミンの綺麗な金髪が揺れる。さらさら揺れる糸みたいな髪は夜の闇によく映えて綺麗だ。月明かりは相変わらず綺麗でアルミンは本に集中している。今がチャンスとばかりに思っていたことを言葉に繋げた。

「もしも、この世界に巨人がいなかったらね私はアルミンとたくさんのお話を見てたくさんの場所を冒険してそれを本にしたいなぁ」
一応聞いているのかアルミンは僕もだよ、とだけ言う。目は依然として本だけど。

「それでね、結婚してね」
「…それは僕と?」
「うん、アルミンと」
結婚なんて聞いて少し苦笑いをしたアルミンにまた冗談だと思われているみたいでむすぅとした顔をしたら気のない声でごめんと謝られた。
「私はなまえ・アルレルトになるの!」
「そっか」
「でね子どもが生まれるのよ。男の子と女の子」
「こ、子ども!?」
うん!子ども発言でついに本から目を話して急いで私に背を向けたアルミンに今度は私が苦笑いをして背中合わせになってみた。

「私の遺伝子なんて一ミリも遺伝しなくていいからアルミンみたいな綺麗な金髪に空みたいな青い目色白の頭の良い子になってほしいなぁ」
「なまえの気の強さがないと虐められちゃうんじゃないかな」
「そう?じゃあ私の気の強いところは似ていいよ」

けらけら笑って話始めれば止まらなかった。お家はアルミンのお家みたいに大きすぎず小さすぎない家がいいね、近所にはエレンとミカサが住んでるの、きっと毎日楽しくて充実してる。ミカサと子どもの話できるのかぁ幸せだなぁ。記念日やイベントごとには御馳走作らなきゃね、アルミンが好きだったのも私作れるようになるから安心してね。ふわふわきらきら。子どもにはあの童話を話してあげたいの、このお話をしてあげたいの、ぽつりぽつりと出てくる言葉に空虚感が付きまとってはいつの間にか私を空っぽにした。

尻窄みになっていった言葉たちが消える頃にアルミンは立ち上がって私と向き合うようにしゃがんだ。泣いた子どもをあやすみたいに目線を合わせて優しく頭を撫でる。
「ねぇなまえは今、幸せじゃないと思ってる?」
「ううんアルミン私」
普通の幸せを味わいたかったのかもしれない。
出た声は蚊の鳴くような声で、きっとアルミンにも聞こえなかったかもしれない、むしろ聞かれたくないと目をつぶった。
「情けない話だけどなまえが一緒に兵士に志願してくれて僕は嬉しかったんだ」
「ほんとに?」
「本当に。僕はなまえが近くにいてくれるだけでいいよ」
なまえは違う?首を傾けたアルミンに勢いよく抱き付けばうわぁっと声をあげて倒れてしまった。それからため息を着いて、背中をポンポンと軽く叩いてくれた。
「それになまえは間違ってるんだ」
「え」
「もしもじゃなくてそれを本当にすればいい」
「わ、私と結婚してくれるの?巨人がいなくなったらなんてきっとずっとずっと先だよ?私おばさんだよ?」
「なまえがおばさんなら僕もおじさんだ。問題ないよ」
「アルミンは魔法使いなの?」
「なんで?」
「私の欲しい言葉を全部くれるんだもの。」
顔は涙と鼻水でぐしょぐしょだ。アルミンは持っていたハンカチで私の顔を拭いた。情けなく笑って魔法使いだったら泣かせてないよと言った。


しものはなし

君とならなんだっていい