世界を測る物差しを下さい
もうどうにもならない。零したため息は誰に拾われることもなく落ちた。涙はもう枯れたのだろうか、あれから泣くことはなくなった。夜は眠れず、外が賑やかになる頃意識が落ちる。食事は喉を通らず、液体を押し込むことしかできない。私は、世界のすべてで彼を感じていたのだ。彼のいない世界など、生きる価値すら見出だせないのだ。
「ゼリーなら食べられるか?」
柳は優しい。私がいくら堕ちても柳は変わらず、優しかった。私が彼に恋した時も、その想いが届いた時も、そしてあの日も。柳はいつだって同じように私に向かって、淡々と言葉を投げた。それが絶対的なものであると、私はそう思ってしまっていた。
「何か食べたのか」 「眠れたか」 「泣いては…いないみたいだな」
柳の指先は優しく私の頬を滑る。こんなやり取りを何回繰り返したのかも分からない。何も言えない私と、ただただ優しい柳。
「やな、ぎ」 「どうした」 「ごめん」 「気にするな。俺が好きでやっているだけだ」 「ごめん」
ごめんなさい。なぜ柳が私に優しいのか、知っています。ごめんなさい。それでも柳に甘えつづける私を、許してほしいのです。いつか私が彼を忘れた時も、柳は変わらず優しくしてくれるんだろうか。あの人がいない世界を抜け出した時、そこにあるのがこの優しい世界だといいのに、と。いつ来るか分からないその時を、私も柳もきっと待ち続けるんだろう。
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それでもわたしはきみをすき様に提出。
切ない、というよりモヤモヤした重い話になってしまったかもしれません。素敵なお題、ありがとうございます。 (q/nao)
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