ひとつ、またひとつ


「あ、」

気づいた時には、私の身体は地面に叩きつけられていた。痛い…でも何処も折れて無い…失敗かぁ

「名前!!」

「夏目…」

「大丈夫か?只でさえ傷だらけなのに…」

優しいなぁ…私が怪我したくてしてるのに…でも、夏目の言う通り、私の身体は傷だらけだ。
右目と頭、首、手に巻いた包帯。左手のギプス。右足のギプス。全部自分でつけた傷だ。
二つのギプスは階段や屋上から落ちた時のもの、手は大量のリスカ跡、首は首吊りの紐の跡に右目は万年筆を刺した。

この傷に兄さんは何も言わない。全て自分でやったという事を知っている兄さん。それは、私達兄妹が酷く歪んでいて、家族と呼べる仲では無いから。

完全な人間では無い私は人間になる為に、自分に傷を付ける。血を流せばその分だけ、妖の血が無くなると思った。

ひとつ、またひとつ

(私の傷はふえていった)



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