お試しその1《マフィアVer.》
【中原中也と】
no.Side
___尾崎紅葉がまた子供を連れて来た。
そんな噂を聞き、中原中也は胸を踊らせた。
尾崎紅葉が、連れ帰った子となれば、それは息子の様に、弟の様に育てられた自分の、妹、弟の様に成るかも知れないと考えたからだ。
帰って来た紅葉が連れて来たのは薄茶色の髪に、濁った様な、如何にも、絶望しました。と云いそうな瞳の美少女だった。
「(青鯖みてェな目、した奴でも、可愛いな…)」
中原中也のなまえに対する第一印象は「ぼんやりしたとろくさそうな可愛い女」だった
「中也、今日からお主の妹分となるなまえじゃ」
「中原中也だ!宜しくな、なまえ!俺の事は兄ちゃんッて云ッても良ンだからな!!」
「…夏目なまえ。宜しく。ナカハラサン」
「(こ、此奴!!!!前言撤回だ!!!すげェ生意気で青鯖よりタチが悪いかも知れねェ!!!!)」
「此から、仲良くするのだぞ。さて、なまえ。此から首領の元へ挨拶に向かうぞ」
小さく頷いて部屋を出て行った紅葉のあとをついて行ったなまえを見て、幼き中原は不安を抱いた。
【森鴎外と】
なまえSide
紅葉さん____改め、姐さんに連れて来てもらった部屋には、黒い服の男の人と赤い服の私よりも少し歳上に見える女の子がいた。
「紅葉君、その子が例の…」
「そうじゃ、精神操作の異能を持つ幼子じゃ」
「そうかい…それにしても、可愛いねェ…!!!」
ずいずいっと此方に寄ってきた首領さんは青い美飾服(ドレス)を持っていた
「夏目なまえちゃんだね。之を着てくれないかい?可愛い美飾服だろう?君が着るともっと可愛く成ると思うのだよ。ほら、この襞(フリル)の付いたスカァトなんか花弁の様だろう?」
「リンタロウ、キモい」
私の目の前で青い美飾服について力説する首領さんに女の子が毒を吐く。
「首領…」
「あゝ、済まないね。紅葉君。少し、なまえちゃんを貸してはくれないか?」
「…写真で手を打つ」
どうやら私は、着せ替え人形にされるらしい。マフィアの首領がこれでいいのか?!
「なまえちゃん、私の名前は森鴎外。お義父さん、とかリンタロウと呼んでくれて良いよ」
「は、はあ…」
「私はエリス!!よろしくね!!なまえ!あと、リンタロウの事は基本無視でいいわよ!!」
「エリスちゃん非道い!!!!でもそんな所も可愛い!!」
そこで私は目を覚ました。
「懐かしい…な」
今は座敷牢にいる私だけど、此処も中々整った環境だった。中也兄さんは毎日来てくれるし、お義父さんも一週間に一度、外に連れ出してくれる。
何より、座敷牢で出会ったQくんはとてもいい子だった。
妖たちも沢山いる。暇などないのだ。
そう云えば、生き別れた兄は何処にいるのだろうか…二、三年前まで情報が入って来た筈…
私について余計な事を話されたら困るなァ…その時は、口封じ(という名の暗殺)すればいいか…
私の今の兄は中也兄さんだし、お義父さんに、組織の障害となる危険因子は取り除かなきゃね。