サァサァ、目障りな雨が身体を打ち付ける。
棺の中の彼女は、とても美しかった。
「……名前、」
白い肌に手を這わせて、冷たい唇にソッと触れるだけの口づけを。
「愛しています」の言葉と共に。
「……っ」
粗末な石に刻まれた名前が心を揺さぶる。
この下に彼女が埋まっているんだと考えただけで、吐き気がした。
「ああ…あの時も、こんな雨だったな…」
無二の友が、死んだ夜も。こんな…目障りな雨だった。
「…忌々しい」
…雨は、嫌いだ。私の大切なものを、すべて奪っていくのだから。腹立たしくて仕方がない。
「…雨が降るのなら、照らす光に意味など無いだろう」
光が闇に敵う事は無いのだから。
地を濡らし、光を浴び、また地を濡らす。
大地に水がなければ、生きる事は出来ない。ああ…なんと滑稽か。
「…ならば最初から、光など知らなければ良かったのだ」
光を知る事がなかったら、こんな思いなど…する事はなかったのに。
「……冷たいな」
誰かが流した涙のように、止めどなく降り続く雨。
頬を滑り落ちるその滴は、一体誰の涙なのだろうか。
雨の中で、静かに頬を濡らした
2011/12/04
2011/12/27 加筆